ベニスによると、Disney(ディズニー)が大きな成功を収め始めた1930年代には、同社社員の多くが20代で、中央値は26歳だった。ビル・クリントン元米大統領の選挙対策チームや、黎明期のApple(アップル)なども同じような傾向だった。ベニスが分析した組織の大部分では、35歳はもはや若くないと考えられていた。
科学の進歩は「1人が死ぬたびに訪れる」という格言がある。これは、科学界の規範は急速に確立されて提唱者が亡くなるまで続き、その学問分野の前進は提唱者の死によって初めて可能になるという意味だ。
筆者は最近、年配者を見下したり軽視したりしないことの重要性を説く記事を書いてきたが、少なくとも科学の分野に関しては若さが明確な長所のようだ。
米オハイオ州立大学が最近行った研究でも、科学者が最も独創性を発揮するのはキャリア初期であることが示された。ある科学者の研究がもたらすインパクトは、キャリアの過程で最大3分の2まで低下するという。
ただ、研究を行ったチームは、年配の研究者を見捨てるべきだと主張しているわけではない。彼らは、キャリアの後半に入った科学者の支援を続けるよう呼び掛けている。
研究チームは、1980~2009年に発表された約560万件の生物医学系論文を対象に、著者の情報や、他の研究者から引用された回数を分析。この回数が多いほど、論文の革新性が高いとみなした。
結果、科学者はキャリアの早い段階で最大の成果を残していたことが示された。キャリアの初期に学術界から姿を消す人は多かったものの、この時期を乗り越えた人は研究を20~30年にわたり継続する傾向にあった。
研究チームは「キャリア初期の科学者は多彩な革新性を示すが、時間が経つと革新性に欠ける人が淘汰(とうた)されるようになる」と説明。科学者全体では時間の経過とともに革新性が低下しているようには見えないものの、革新性が低い研究者は比較的若い年齢で脱落するため、キャリアを進める中で誰もが革新性を失う傾向にあるという事実が隠されていると指摘した。
研究者が年を重ねると、革新的な研究結果を出す頻度は大きく低下。データからは、キャリアの後半になると論文の引用頻度が最大3分の2に減ることが示された。
研究の影響力を測る指標としては、論文の被引用数以外にも、最新のアイデアが採用されたかどうか、複数の学問分野にまたがった研究を行ったかどうかなど、さまざまな基準で分析が行われた。
この分析結果からも、研究者の革新性は年数が経つにつれ低下することが示された。さらに、キャリア初期でピークを迎える傾向は、大きな成功を収めた科学者の間で顕著だった。一方、比較的無名の科学者は、年をとっても革新性が大きく低下してはいなかった。
研究チームは、若い科学者は独創性がピークの状態にあるものの、個人差が大きいと説明。一方、年配で経験豊富な科学者は時の試練に耐えてきた人ではあるものの、その人自身のピークは過ぎていると指摘している。
(forbes.com 原文)