世界の貨幣に描かれる女性は46人、英女王死去で今後はどうなる?

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世界中のほかのどの女性よりも、その肖像画が数多くの紙幣に描かれてきた故エリザベス英女王。だが、その姿も今後は徐々に消えていくことになるのかもしれない。オーストラリアは先ごろ、新たに発行する通貨に亡き女王の肖像画を使用することはないと発表した。

英領、そして英連邦の各国のなかには、今後も新国王チャールズ3世の肖像画を採用する国もあるだろう。だが、オーストラリアを含む一部の国は、君主が変わったこの機会に、時代遅れにも思える「王族の肖像」から離れることになるとみられている。

世界的にみて、貨幣に女性が描かれることはいまだに少ない。肖像画に採用されている女性の数は、現在もわずか46人にとどまっている。ただ、既に女性を通貨に描いている8カ国では、より多くの女性たちの肖像を自国の紙幣や硬貨に採用し始めた。

エリザベス女王以外の女性たち

2016年以降に新貨幣を発行した国について調査したところ、ルーマニアは20レウ紙幣に、シエラレオネは20レオン紙幣に、新たに女性の肖像画を取り入れていた。また、インドネシア、イスラエル、ボリビアなども、女性を描いたデザインを選んでいる。

カナダは2018年、人種差別と闘った活動家のビオラ・デズモンドを、英国は2017年に、作家のジェーン・オースティンの肖像を採用した。オーストラリアは1990年代以降、エリザベス女王以外の女性4人を描いた紙幣を新たに発行。同じ英連邦の国であるニュージーランドとバハマはそれぞれ、女王に加えて自国出身のほかの女性1人を貨幣のデザインに取り入れている。

一方、南米では現在、ほとんどの国の紙幣に女性が描かれており、4カ国は3人以上の女性を採用している。各国が女性の肖像画を増やし始めたのは、2000~2010年代だ。

すでに1970年代に修道女で作家のソル・フアナ・イネス・デ・ラ・クルスを紙幣に採用していたメキシコは、2010年に画家のフリーダ・カーロ、2019年にフェミニストのエルミラ・ガリンド、革命家のカルメン・セルダンの肖像を新たに取り入れた。

ペルーは1990年代、ソル紙幣にリマの聖女・ローザの肖像を採用。2021年に歴史家のマリア・ロストウォロフスキと、日系の画家ティルサ・ツチヤ、歌手のチャブーカ・グランダを描いた紙幣を発行している。

女性の肖像画を使用した通貨が少ないアジアでは、キルギスが19世紀の女王クルマンジャン・ダトカや、バレリーナのブブサラ・ベイシェナリエワの肖像画を使用した紙幣を発行している。また、フィリピンは、選挙で選出された女性元首(グロリア・アロヨ元大統領とコラソン・アキノ元大統領)を採用した唯一の国となっている。

英連邦の貨幣の今後は?

通貨に描かれる肖像画において、最も大きな変化が起きると考えられるのは、現在はすべての紙幣にエリザベス女王の肖像画を採用しているカリブ海の7カ国だろう。

英領バミューダの通貨からはすでに女王の姿が消え、代わりに動物や植物、風景が描かれている。ほかにも今後、欧州の単一通貨ユーロや、デンマーク、ブラジル、フィジーの貨幣のデザインには、人物の肖像画以外のデザインが採用されることになるとみられている。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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