ここに関連するのが獺祭における精米歩合だ。77%磨かれた酒米を使用する「獺祭2割3分」を主力商品とする同社としては、「精米しやすい」ことが常に酒米に求められる。しかし心白はもろく欠けやすいため、高精白を目指すとその大きさが逆に邪魔をするという。今までの常識を疑い、新たな挑戦を続けてきた同社ならではの新基準がここにある。
その基準に基づき、照射光量を調整したりモニターで拡大したりして酒米の状態をつぶさに確認し、厳選な審査が行われた結果、熊本県阿蘇市の「水穂やまだ」が見事グランプリに輝いた。そして準グランプリは、滋賀県の「下八木営農組合」が獲得した。
発表された瞬間、会場には盛大な拍手が湧き起こり、受賞者には達成感に満ちた笑顔があふれる。良質な酒米栽培に挑戦を続ける農家が注目されることで、生産者にはもちろん日本酒業界にも新たな活力がうまれることを確信した瞬間であった。
最高を超えた山田錦で醸す酒「Beyond the Beyond」とは
さて、最高を超えた酒米はどうなるのか。酒米生産者の挑戦のあとは、その米を醸す酒蔵の挑戦が待っている。グランプリ米は「DASSAI Beyond the Beyond」と名付けられた最高を超える日本酒となり、世界へと羽ばたいていくことになる。本数は限定23本。磨きについての具体的な数字は明らかにされていないが、「米を磨けるところまで磨いていく」と桜井社長は意気込む。2月もしくは3月頃から仕込みをはじめ、状況を見極めて出荷のタイミングを決めると言う。
ちなみに、前回の「最高を超える山田錦プロジェクト 2021」のグランプリ米で造った「Beyond the Beyond 2022」は、ニューヨークのサザビーズオークションにおいて最終価格8125ドル(約115万円)で落札されている。これは日本酒の価値の概念を大きく覆すもので、日本酒業界においての重要な意味を持つ結果と言える。