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2023.03.12 10:00

遺産相続の落とし穴は不動産共有、キーパーソンは『きょうだいの配偶者』だった

Getty Images

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岸田政権の「大増税」政策の見通しについて、とりわけ消費税の15%への引き上げについては、すべての国民の関心事だ。

一方「相続税増税」については、「まだ考えなくても大丈夫」「とりあえずの日常には関係なし」と目をそむけているむきも少なくないのではないかもしれない。

しかし、それでいいのだろうか?

2023年度の税制改正により、相続税が増税される。生前贈与加算が3年から7年に延長されたのだ。2024年1月1日以降の贈与から適用される。親が元気なうちにやっておけることを知ったり、相続についての基礎教養を今のうちから武器にしておいたりする必要は明らかにありそうだ。

ベストセラー『相続格差』は、相続専門税理士の天野隆氏が、これまで扱った2万件以上の相続例から分析した「モメない分け方」のコツや、円満相続の秘訣を伝授し、相続の幸福について考える1冊だ。

天野氏がたどりついた「相続で縁が切れる家族」、はたまた「仲が深まる家族」の分岐点とは──。

同書からの転載で、3回にわたって紹介する。今回はその2回目、「不動産共有」という落とし穴について解説する。


絶対やってはいけない「不動産の共有」


それほどモメていない相続であっても、相続税の申告期限まで遺産分割が進まないことがあります。とくに土地の分割(分筆)が含まれていると、土地の測量や手続きに意外なほど時間がかかるものです。

そこで、「もう間に合わないから、とりあえず不動産はきょうだいで共有にしておこう!」となるケースも見かけます。不動産の共有とは、土地や建物を複数の人が共同で所有することです。しかし、不動産の共有はトラブルのもと

「きょうゆう」を「競誘」と書く人もいるぐらいです。相続に関わる専門家は、「不動産の共有は絶対にやってはいけない」と口を揃えます。

最近多いのは、母親が1人暮らしをしていた家と土地を、きょうだいで共有するケースです。「どうせ売るんだから、それまでは共有でもいいか」となるわけです。しかし、たとえ一時的な措置だとしても、共有はやめたほうがいいと私はアドバイスしています。

確かに、共有にしたままで売却すれば、売却額を2人で山分けにすればいいように思えます。それで何事もなく済むケースもありますが、往々にして売りたい時期や金額は、それぞれ異なっています。

ずるずると売らないでいるうちに、1人が経済的に苦しくなって、「早く売ろう」といい出すかもしれません。でも、ほかのきょうだいが首を縦に振らないと、売買も貸すこともできません。そこで、きょうだい間のトラブルが発生してしまうのです。
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