ビスポークでロールスロイスをオーダーメイドできる
静かで乗り心地がよい豪華な車はロールスロイスの他にも多くある。しかし、ロールスロイスほど顧客の要望を車に反映できる自動車メーカーは他に存在しないだろう。
ロールスの独自性の極みともいえる「ビスポーク(bespoke)」は、ボディカラーはもちろん、内装や外観までオーダーして世界に1台だけのロールスロイスを発注できるプログラム。
ZOZOの創業者である前澤友作氏がオーダーしたファントムのボディカラーは、織部焼きをイメージした「MZ 織部グリーン」と名付けられた深緑色。また、1000個のダイヤモンドを砕いた粉末を塗料に混ぜた「ダイヤモンドスターダスト」と呼ばれる贅沢な塗装が施された車もある。
当然ながら、ビスポークでオーダーしたぶんだけ、車両価格は内容相応に跳ね上がる。
例えば、顧客の希望を叶えるためにファントム クーペのプラットフォームを使って製作された2ドアクーペの「スウェプテイル」の価格は約15億円。4年を掛けて製作された3台限定の「ボートテイル」の価格は推定30億円だ。
このように、オーダーメイドによって新しい車までも生み出してしまうロールスロイス。ここまで顧客のオーダーに柔軟に応えることができるのは、手作業で組み立てを行なうからこそだろう。
VIPを守る高い安全性もロールスロイスならでは
Shutterstock重要人物が乗る車に選ばれるだけあって、ロールスロイスは交通事故に対する安全性はもちろん、基本設計の段階からテロや暴漢からの襲撃に備えた防弾・防爆仕様を視野に入れて各部が設計されている。
2021年9月、ビートたけし氏がつるはしを持った男に襲われた事件があったとき、ビートたけし氏が乗っていた車はロールスロイス ファントムだった。その車両は防弾仕様ではありませんでしたが、遮音のために厚くされたガラスや鋼板が乗員の身を守るようにはたらいたようだ。
また、ロールスロイスは車を用いた襲撃から逃れるために、足回りは柔らかいだけでなく400PS以上出力を発揮するBMW製V型12気筒エンジンを使い切れるだけの運動性能やハンドリング性能も備わっている。
原則として乗り心地と運動性能は二律背反の関係にあるため、これらを両立させて優れた乗り心地に仕上げられるのは、優れたエンジニアリングの成せる技といえる。顧客の身を守る入念な安全設計もロールスロイスの価格を引き上げる要因になっている。
ロールスロイスが高くても売れる理由
贅を尽くしてつくられたロールスロイスは高価にならざるをえないが、これだけ高額でも買う人が世界中にいる。
ロールスロイスの2021年の総販売台数は過去最高の5586台を記録。これは高級品であるというロールスロイスブランドへの共通認識が生み出す信用価値の高さと言い換えられる。
そのかわり高いブランドバリューが足枷となって、一般的な自動車メーカーが行なう安易なコストダウンはできず、手間がかかったぶんだけ価格を引き上げるしかないため、車を安くつくることができません。そもそも、ロールスロイスを求める顧客は安さを求めていないだろう。
こういった高級ブランドには商品が高いほど売れるというヴェブレン効果もはたらいています。ヴェブレン効果とは、アメリカの経済学者が説いた「見せびらかしの消費(顕示的消費)」とも呼ばれる経済用語だ。
高額なロールスロイスの、それもビスポークによる世界に1台しかないロールスロイスともなれば、これ以上に自己顕示欲を満たす車はない。つまりコストダウンした安価なロールスロイスでは、かえって売れなってしまう恐れがあるということだ。
ロールスロイスの車両価格が高い理由は、これまでの実績に裏付けられたブランド価値が反映されているためです。そして高くとも売れるのは、顧客の満足度をしっかりと満たしているからにほかならない。
(本記事はMOBYからの転載である。)