WeChatのテンセント、国際フィンテック事業の第一歩となるキャンペーン

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ライバルのAlibaba(アリババ)と同様に、Tencent(テンセント)は海外におけるフィンテック投資の大規模なポートフォリオを構築している。その中には、フィリピンのVoyager Innovations(ボイジャー・イノベーションズ)やシンガポールのSea Group(シーグループ)など、フィンテックを武器に台頭するビッグテック企業への戦略的投資もあり、Tencentは自らがいずれ支配的なプレイヤーになると考えている。また、オーストラリアで設立され香港に本社を置くAirwallex(エアワレックス)のように、中国本土にニッチな市場を持つフィンテック企業の市場参入を促進することに重点を置いた投資もある。

AlibabaのAnt Group(アントグループ)は、中国国外に独自のクロスボーダー決済エコシステムを構築しようと静かに取り組んでいる一方、Tencentは海外のフィンテック投資において、似たような包括的な戦略を持っていない。これは、Tencentのフィンテックの実力がWeChat(ウィーチャット、微信)というスーパーアプリに由来するものであり、中国本土や一部の中国人ディアスポラコミュニティ(元の国家や民族の居住地を離れて暮らす国民や民族の集団ないしコミュニティの意)以外ではあまり使われていないことが一因と考えられる。

確かに、Tencentは海外でWeChat決済のレールを構築しようと試みており、WeChat Payは中国人観光客が旅行する世界の多くの地域で広く受け入れられている。しかし、それ以上の規模には変化しておらず、中国国内の決済エコシステムと密接に結びついているため、より広い国際市場へのクロスオーバーの魅力に欠けるのである。簡単にいえば、中国本土に銀行を持たない人は、WeChat Payをあまり利用することはないだろう。

WeChatのデジタル金融サービスのエコシステムを拡大する能力がないため、Tencentの国際的な投資ポートフォリオの中で、異なるフィンテックプレイヤーを結びつけるものはなかった。少なくとも、これまでは。

Tenpay GlobalとTenpay Global Remittances

Ant GroupがAlipay+を発表した後、Tencentが独自の新製品(または複数)で対抗するのは時間の問題だった。当然のことながら「Tenpay Global(テンペイ・グローバル)」と「Tenpay Global Remittances(テンペイ・グローバル・リミッタンス)」はAlipay+と同様、画期的な新たなものということではなく、既存サービスのリブランディングキャンペーンであり、いくつかの微調整が施されている。

Tenpay Globalは、eコマースプラットフォーム、グローバル企業や個人顧客、個人送金といった異なる顧客セグメントに対応する、企業や消費者向けの一連のクロスボーダー決済商品とソリューションを統合することを約束している点で便利かもしれない。
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翻訳=Akihito Mizukoshi

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