日本では今年も「大学入学共通テスト」が終わり、受験生、ならびにご家族の方々はそれぞれの心象で次なる関門に臨んでいることと思う。
そんな中、今回は、筆者が勤務するスタンフォード大学をはじめとする米国の大学と日本の大学での「入試制度の違い」と、なぜそんなにも選考基準が違うのか、を考えてみたい。
スタンフォード大学アメリカンフットボール部コーチとして2022年が厳しいシーズンであったことは、前回お伝えした。自ら責任を取る形を選んだ我々のヘッドコーチは、シーズン終了直後に辞任を発表した。
その後、新たなヘッドコーチが採用されたのが12月10日、その後約1カ月の間私がしていたことは、次の仕事を探すことでも今の仕事をリテインする努力でもない。ただひたすらリクルーティングに関する業務である(アメリカのカレッジスポーツの指導者にとって、それがいかに大事であるかはこの連載の始め、スタンフォード大コーチが「成功のカギは人材採用」と明言する理由」で述べさせていただいたので、ご一読いただきたい)。今年つまり2023年に入学してくる高校生が初めて、口頭ではなくフィジカルな形で文書にサインというアクションをするのがこの時期であるため、土日も返上してひたすらリクルーティングに関わる業務をこなしていたのである。新しいコーチが持つ戦略や戦術の話は、二の次、三の次である。
「私のスタンフォードでの16年間は、アドミッションズオフィス(入試課)との戦いであったと言っても過言ではない」。連載の1回目でとりわけ強調して表現した言葉である。どれだけ素晴らしい選手を見つけても、スタンフォードというハイレベルの学校に入学してもらわなければ、我々の努力もすべて水の泡となるからである。スタンフォードであるが故のメリットであり、デメリットである。
この数週間はまさにそのピークであった。寝る間も惜しんでリクルーティングの仕事をする中で、ふと頭に浮かんでくることがある。「アメリカには日本の入試にあたる形態のイベントが存在しない」ということだ。