教育

2023.01.28

スタンフォード大は合格者をこうやって選定する

スタンフォード大学アメリカンフットボール部コーチ、河田剛氏。コーチ業の傍ら、シリコンバレーで日米双方のスタートアップのサポート/アドバイザーを務める

5.「社会構造」の問題──政策担当者が「未来」を実感できない?

東京オリンピックと同じ構造である。東京オリンピックの数兆円と言われる借金を日本が払い終わる頃には、それを決めた人達は全員、この世にいない。

もちろん、彼らが子供の将来や日本の未来を考えていないとは断じて思わない。ただ、自分がすでに生きていない未来、つまり想像や実感が難しい、ビジョンがぼやける条件に関して「優先順位を下げてしまう」ことがあるのは、容易に推測できる。

議員の高齢化と若者の政治離れ、我が国の選挙制度の問題が、誰も望まぬ結果として時代に合った教育への進化のスピードを鈍化させているのではないだろうか。

スタンフォード大が探すのは「スタンフォードっぽい生徒」だ

私の経験を通して、簡潔に言うなら、日本の入試の制度では、「大学に個々の特徴や個性が生まれない」。一発勝負、マークシート、記憶力を試す事が大半の入試制度では、どこへ行っても同じであるし生徒の個性など見えるはずがない。我々スタンフォードの例を取ってみれば、私達がいつも探しているのは、「OKG = Our Kind of Guy」である。つまり、「スタンフォードっぽい」生徒なのである。

個性をあえて排し、方針に反論はせず、がむしゃらに同じ方向へぺダルを漕ぐタイプの社員でも終身雇用を約束されたかつての時代には、大学の選考システムは「記憶力中心」で良かったのかもしれない。しかし、これだけ多様化が進んだ時代、一つの島国だけでは多くが完結しないこの時代に、少なくとも私は「就職予備校であるべき」と考える大学の選考方法が、大昔から変わっていないのはあり得ないことと感じる。

安全保障、自由化諸策、裁判員裁判制度、働き方改革──。欧米から押し付けられた感もあるいわゆる「グローバル化」によって、これまでとは異質な文化を受け容れざるを得なくなった我が国。その中にあって、大学入試制度が戦前から変わらないのは、一言でいえば「あとまわし」だからではないか。

「少子化対策」が万が一成功したとして、その何年か後には大規模な教育改革が「まったなし」で必要とされることを、我が国のリーダーはご存じなのであろうか。

文=河田剛 編集=石井節子

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