樽で眠る2022年のアルビーリョ・マジョールは、ミネラリーでフレッシュな味わい
注目生産者の珍しいオレンジワイン
そんなリカルド氏の挑戦が、アルビーリョ・マジョールを使用したオレンジワインだ。2018年に初めて387本のみ醸造し、今も改良を重ねているという。「アルビーリョ・マジョールは、万能な品種」と言うとおり、まだまだそのポテンシャルは未知数だ。ちなみに今日本でも注目のオレンジワインとは、柑橘のオレンジから造ったワインではなく、オレンジ色をしたワインのこと。オレンジ色といっても、玉ねぎの皮のように淡いものから琥珀色までオレンジといってもさまざまで、琥珀色(アンバー)色から取って、アンバー・ワインと呼ばれることもある。
なぜ白ワインがオレンジ色になるのかは、その製法を考えるとわかりやすい。オレンジワインは、赤ワインの製法で造った白ブドウのワイン、いわば「白と赤の中間」のワインだ。通常の白ワインでは、最初にブドウを絞り、白ブドウの果皮を使わず、果汁のみを発酵させる。だがオレンジワインでは、白ブドウの果皮や種ごと果汁と一緒に発酵させるため、果皮から色素や渋み成分が抽出され、通常の白ワインには出ない色やコクが加わるのだ。
ロゼワインも白と赤の中間といえるが、ロゼの場合は、「黒ブドウ」を白ワインのように仕込む(最初にジュースを絞って、果汁のみを発酵させる)ところが異なる。
余韻の塩味が魅力のアルビーリョ・マジョールのオレンジワイン
バルトラビエッソのオレンジワインは、オレンジ色がかった、こっくりとした濃い黄金色。ブドウを房ごと使用し、果皮とジュースを卵型タンクで7日間一緒に発酵させた後、樽の中で約14カ月もの間寝かせている。
黄色い花やオレンジなど柑橘に、オレンジピール、空気に触れた林檎、ドライフルーツやナッツ、アーモンドと香りは華やかだ。果実味と香ばしさが綺麗に溶けあって、果皮からくるオレンジワインならではのほろ苦さが味わいを引き締めている。
特徴的なのは、ドライ・シェリーにも通じる余韻の塩気だ。「この塩気は石灰岩の荒野からくるもの」とリカルド氏。オレンジワインは魚にも肉にも合う万能なワインだが、リカルドさんのオレンジワインも、食欲をそそるガストロノミックなワインだった。
水上彩(みずかみ・あや)◎ワイン愛が高じて通信業界からワイン業界に転身。『日本ワイン紀行』ライターとして日本全国のワイナリーを取材するなど、ワイン専門誌や諸メディア等へ執筆。WOSA Japan(南アフリカワイン協会)のメディアマーケティング担当として、南アフリカワインのPRにも力を注ぐ。J.S.A認定ワインエキスパート。ワインの国際資格WSET最上位のLevel 4 Diploma取得。