食&酒

2023.01.28

スペイン「荒野のオレンジワイン」 熟成タンクはなぜ卵型?

モダンな醸造所に置かれた卵型のタンク/アルビーリョ・マジョールのオレンジワイン

石灰岩の荒野にそびえるワイナリー

ブルゴーニュの上質なシャルドネを思わせるものや、オーストラリアのセミヨンのようなキレと熟成感を感じるもの……さまざまなタイプを飲んだなかで、最も印象的だったアルビーリョ・マジョールのワインが、「バルトラビエッソ」というワイナリーのオレンジワインだ。

蔵を案内してくれたのは、ワインメーカー兼テクニカルディレクターのリカルド・べラスコ氏。ボルドーやニュージーランド等で修業を積んだ才気あふれる若き醸造家だ。2022年には、世界的ワインジャーナリストであるティム・アトキンMWの「Young Winemaker of the Year 2022」に選ばれた。
 

ワインメーカーのリカルド・ベラスコ氏
 

粘土と石灰岩が分布する標高915mの区画「ラ・レヴィラ」

まずユニークなのが、畑のテロワールだ。入り組んだ土壌のリベラ・デル・デュエロでは、車窓から見える土の色が白(石灰)、黄色(砂)、赤(粘土)……ところころ変わる。なかでも海抜900m超と特に標高の高い場所にあるバルトラビエッソの畑は、白い石が転がる痩せた石灰岩の荒野にある。ブドウは絶え間ない風に吹きさらされる厳しい気候で育つため、収量も2~3000kg/ha、多くても約7000kg/haと生産者泣かせの少なさだ。しかしそのぶん、風味の凝縮したブドウが収穫できるのだ。

バルトラビエッソのモットーは、できるだけ人が手を加えることなく、石灰岩の荒野の味をワインに映し出すこと。畑では除草剤や殺虫剤を使用せず、2014年からはオーガニックに転換した。醸造面でも、ワインをできるだけ動かさないなど、畑同様に人の介入を最小限に抑える。

 
新スタイルのリベラ・デル・デュエロを感じるモダンなワイナリー


 ピュアな果実味を引き出す卵型タンクは増やしていきたいそう

なぜ、「卵型」?

現代美術館のようなモダンな醸造所で一番に目を引いたのが、卵型のタンクだ。リベラ・デル・デュエロでは熟成に木樽を使うのが一般的だが、ここではコンクリート製の卵型タンクも取り入れている。

実はいま世界中で人気が高まっているコンクリート製の卵型タンク。この独特の形とコンクリートという特性が、ピュアな果実風味を引き出してくれるという。

メリットは、卵型の形状と内部の温度差が自然な対流を起こし、人が手でかき混ぜなくても均一な発酵管理が可能になる点だ。また、コンクリート製容器は木樽のように風味はつかないが、多孔質であるためごくわずかに酸素を通す。ワインはゆっくりと呼吸しながら生き生きとした果実味を保つことができるのだ。
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取材・文・写真=水上彩 編集=石井節子

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