働き方

2023.01.15

職場での「なまり差別」の問題と対処法

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なまりは、その人の出身地を示すだけでなく、その人の人格や能力が周囲からどう認識されるかにも影響する。米国で行われた研究では、なまりを持つセールスパーソンに対する人々の評価が低いことが示されている。さらに、外国なまりがある人は、昇進対象として推薦されない傾向があることも明らかになっている。

興味深いことに、こうした差別は、そのなまりが好きか嫌いかとは関係ないようだ。差別が生じる主な理由としては、相手が自分と同じ「内集団」に属するのか、自分とは違う「外集団」に属するかを判断する上で、なまりが一つの指標となっていることが指摘されている。

社会経済的な地位の違い

なまりは、その人の社会経済的地位を判断する大きな要因だ。英サットン財団(Sutton Trust)が発表した最近の論文では、これが平等性と公平性の面でもたらす問題に焦点が当てられた。

同財団創設者のピーター・ランプル会長は、英国社会では今もなまりによるヒエラルキー(階層制)の意識が根強いと説明している。高い地位に就く人の多くは、いわゆる「BBC英語」を使用しているが、その話者の割合は英人口の10%に満たないという。

論文では、英国で実施したアンケート調査の結果に基づき、なまりに対する偏見が人生にもたらす影響や社会的流動性に対する影響を分析した。結果、異なるなまりに対する人々の姿勢は以前からほぼ変わっておらず、マンチェスターやリバプールなどイングランドの工業都市のなまりや、インド系やアフリカ系カリブ人など少数派のなまりが軽蔑される傾向があることが示された。

残念なことに、調査対象者の半分近くは交流の場でなまりをからかわれたことがあると回答した。研究チームは、こうした偏見による影響はキャリア全体に生じ得るが、社会階級の違いが顕著化するキャリア中盤で特に大きくなる恐れがあると指摘している。

論文によると、なまりが将来の成功に影響すると懸念している人の割合は、社会経済的地位が低い家庭出身の上級管理職で21%だったが、裕福な家庭の出身者では12%だった。また、職場でなまりをからかわれたことがある人の割合は、労働者階級の家庭出身の上級管理職では29%だったのに対し、裕福な家庭の出身者では22%だった。
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編集=遠藤宗生

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