米国医師会雑誌(JAMA)のオープンアクセスジャーナル「JAMA ネットワーク・オープン」に昨年末に掲載された新たな研究結果によると、成長市場でもあるスマートフォンのメンタルヘルスアプリは、消費者に「最適なサービスを提供している」とはいえないようだ。
論文を発表した研究チームは578のメンタルヘルスアプリについて、アメリカ精神医学会が策定した105項目からなる評価基準に従い、臨床評価やプライバシー保護といった重要な指標に基づく系統的な評価を行った。
対象としたアプリは、無料~10ドル(約1330円)でダウンロードが可能なものや、無料で判定が受けられるもの、基本バージョンやトライアルが無料のものなど。88%は無料ダウンロードが可能だったが、完全に無料でサービスを利用できるものは、39%だった。
「差別化」の不足
研究チームは分析の結果、大半のアプリが臨床的証拠に基づいたものではないことを明らかにした。有効性や実現性に関する調査を行い、その結果を明示しているアプリは、全体のわずか15%だった。さらに、これらのアプリには、バリエーションの増加(イノベーションの成果)がほとんどみられていないという。アプリに備えられている機能は大半が類似したもので、最も多いのは、心理教育(41%)、目標設定(38%)、マインドフルネス(38%)関連のものだった。
論文の最終著者である米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのジョントーラス医師は、「アプリの大半は、症状の記録やジャーナリング、マインドフルネス、運動など、ごく基本的なことに対応するもの、あるいは 精神疾患に関する基本的な情報を提供するものにとどまっている」と説明している。
メンタルヘルス関連の問題のうち、最も多くのアプリが対応しているのは、喫煙(33%)、ストレス・不安(28%)、重症ではないとみられる気分障害(20%)だった。
一方、深刻な精神疾患に対応するものとして作成されているアプリは、非常に数が少なくなっている。例えば、統合失調症に対応するものは、わずか2%にとどまる。