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2023.01.13

「モナリザ」や「春」など被害相次ぐ 美術品を守る手立ては

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例えば、(図表3)の損害保険ジャパン「ART PROTECT」。天災による損害や、自館での常設展における展示作業中の事故についても対象になる。館内に限らず、館外への輸送中(貸出中は除く)の事故も補償される。保険料は年間で50万円から。

 

この保険契約にあたっては、ファシリティレポート(施設の状況報告書)や収蔵作品リストを提出するが、作品の評価額については記載不要で、美術館ごとにオーダーメイドで保険設計される。

表下段に記載の「ローンアグリーメント(貸出契約書)」についても触れておこう。

海外から美術品を借り受ける際は、通常、借用先との間で貸出契約書の締結が求められる。だが、借用先によって書式が異なるため一つ一つの精査が必要となるうえ、展覧会特有の保険に関する専門的な内容が多く含まれている。そのため、学芸員が事務業務を兼務しているような美術館では、海外美術品の借用は手間がかかる。

「開催支援サービス」では、無料相談受付や、保険見積および証券見本の作成支援を受けることができる。地方自治体との包括連携協定等に基づく地方美術館が、このサービスを利用できる。

美術品の損害というと、盗まれたり、汚されたり、壊されたり……ということをイメージしがちだ。しかし地震大国ニッポンにあって、増え続ける自然災害への備えまで鑑みると、修繕費予算での対応には限界があるかもしれない。

大事な美術品を後世につないでいくうえで、所蔵作品についても保険の活用などでしっかり備えて欲しいと願ってやまない。

 
そういえば、美術館や博物館に詳しい友人が、「海外では“自撮り棒”の持ち込みを禁止している所も多いよ」と言っていた。他人の空間を侵害する恐れがあるほか、自撮り棒で作品に損害を与える事例も発生しているためだという。

自分も美術館でうっかり作品に損害を与える可能性があることを、あらためて考える機会となった。

文=竹下さくら 編集=露原直人

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