動く物体を止めることなく、外観のわずかな違いまで認識できるため、従来の画像認識において必要だと考えられていた工程や動作を丸ごと省略することが可能だ。本技術を製品の外観検査に活用することで、検査工程そのものが不要になり、製造業での業務効率化・生産性向上に貢献することが期待されている。
もちろんこの技術だけでは「シャッターグラス」は成立せず、スマートゴーグルの技術や、室内に投影するための技術、人の美意識を判定する技術など、さまざまなロストピースがある。しかし、妄想をラボにとどめず公開したことで、大阪大学から美意識を判定するための技術提供が成立し、プロトタイピングが実行された。
このシャッターグラスのプロトタイプは、大型カンファレンスで公開されたり、NECのショールームで展示されており、多くの事業者から未来に向けたフィードバックを獲得している。
妄想から具現まで、約2年。メンバーの熱が途絶えることなく、共創によりプロジェクトが推進されつづけている好例だ。
もちろん万能なメソッドなどありえないし、企業が抱える課題は複雑であるのだが、未来事業に関わるすべてのひとが、これまでよりもダイナミックな挑戦をしたくなるような、背中を押される仕組みが共有できれば嬉しい。
本稿は1月14日発売の、筆者の最新刊『妄想と具現 未来事業を導くオープンイノベーション術DUAL-CAST』(日経BP)の内容を再編集しています。