ドローンとAIはサメの襲撃から海水浴客の身を守れるか?

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ドローンが空へ飛び立ち、オーストラリアの海岸線上空でホバリングしながら、真下のきらめくターコイズブルーの海へとカメラの角度が調整されるのを見て、あなたは目を丸くするかもしれない。「またTikTokのインフルエンサーが完璧なショットを撮ろうとしている」とあなたはブツブツいうだろう。しかし操縦者をよく見ると、彼らの横には明るい黄色と赤の文字で「Keep Clear(近づかないで)」と書かれた標識があることに気づく。TikTokのインフルエンサーではない。

操縦しているのはオーストラリアのサーフライフセーバーで、海岸であなたのような海水浴客に近づこうとするサメを発見するために上記のドローンを使っている。ニューサウスウェールズ州政府は、サメとの共存を図るため、今後数年間で多額(正確には8500万豪ドル[約77億円]以上)をサメ対策に投じることにしている。もちろん、ヘリコプターによるパトロールや、意見を二分しているサメの侵入を防ぐ網やサメの存在を検知するシステムの1種であるドラムラインもあるが、2020年の調査では安全のためにドローンによるサメ調査が一般に好まれることが明らかになった。

これはニュースではない。州政府は2016年からドローンを使ってサメを発見し、2018年からはSurf Life Saving NSWと組んでその活動を続けている。ドローンは高度約60メートル超まで上がる。ドローンがとらえた映像をリアルタイムに確認しながら青い海の上でテクノロジーを実行するために訓練を受けたサーフライフセービングのパイロットが操縦する。

パイロットたちはただ美しい波を眺めているのでなく、水面下を泳ぐサメの姿を追っている。パイロットはサメの形状の見分け方(例えばホホジロザメとイタチザメは異なる)や他の動物(サメの見え方はアザラシや大きな魚とは異なる)について訓練を受けているが、気象条件が悪いときは判別がやや難しいこともある。風の影響で鮮明な写真が撮れない、日光の反射がある、あるいは水が濁っていて暗い、どこもかしこも海藻だらけといった場合だ。

ドローンの操縦者は通常、60%の確率で正しい判断を下すが、これに安心感を覚える人もいれば、少し不安に思う人もいる。そこで科学者らのチームは、人工知能(AI)がその解決策になるかどうかを確かめることにした。コーマック・パーセル博士はニューサウスウェールズ州の第一次産業省から資金援助を受けて、サザンクロス大学とディーキン大学の非常勤職員であるポール・ブッチャー博士とともにマッコーリー大学で研究を行った。
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翻訳=溝口慈子

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