航空会社の国際業界団体である国際航空運送協会(IATA)は、持続可能な航空燃料の使用と、カーボン・オフセット(温室効果ガス排出の相殺)によって、排出量を80%以上削減できるとしています。
エアバスなど大手航空会社は、電気や水素を燃料とする航空機に代表される低排出ガス技術の開発を進めています。本題について世界経済フォーラム(WEF)のアジェンダからご紹介します。
格安航空券が手軽に入手できることは、もはや当たり前のこととなっています。
しかし、航空輸送は世界の二酸化炭素排出量の約2.5%を占めており、ほとんどの航空機がジェット燃料を動力源としています。抜本的な削減策が講じられなかった場合、航空業界の需要によっては、21世紀半ばまでに、温室効果ガス排出量が2005年比で300%以上増加する可能性があると欧州委員会は予測しています。
2018年における世界の二酸化炭素排出量のうち、航空セクターからの排出量は2%以上を占めています。 Image: Our World in Data
航空業界では、2050年までに二酸化炭素の排出量をネットゼロにする目標を掲げています。10月には、国連の国際民間航空機関(ICAO)が中心となり、184カ国が参加する二週間の交渉が行われ、二酸化炭素排出量の削減策について合意しました。これには革新的な航空機技術の採用、「合理的」な航空運営、持続可能な航空燃料(SAF)の利用・増産などが含まれます。
ICAO理事会のサルバトーレ・シャキターノ議長は、「業界団体のコミットメントに続く形で、各国が航空輸送の脱炭素化に向けたこの新しい長期目標を採択したことは、排出ガスのない動力飛行を実現するために、今後数十年にわたって加速しなければならないグリーンイノベーションとモメンタムに大きく貢献するでしょう」と述べています。
世界経済フォーラムで航空業界の脱炭素化を主導するライア・バーバラは、「コミットメントを実行に移す段階では、脱炭素化目標を掲げる政府の支援が業界にとって不可欠です。今世紀半ばまでにネットゼロを目指すICAOの長期目標(LTAG)は、この方向に大きく前進する一歩となるでしょう。世界経済フォーラムは、今後の取り組みについてICAO、各国政府、企業をグローバルに支援していきます」と話します。
航空燃料の持続可能性を高める
国際航空運送協会(IATA)は、持続可能な航空燃料によって二酸化炭素排出量を80%削減することができるとしています。SAFは、農業廃棄物から空気中から取り出した炭素まで、さまざまな原料から製造できます。
SAFは既存の航空機や給油インフラでも使用可能ですが、高い製造コストや供給量不足により普及が遅れています。現在、SAFの利用は、全ジェット燃料の0.1%に満たないとみられています。
IATAは、航空業界が2050年までにネットゼロを達成するために必要とされる排出量削減分の約65%が、SAFによるものになると試算しています。しかし、そのためには、大幅な増産により需要を満たす必要があるとしています。さらに、「増産が最も進むのは、政策的支援が世界で一般的になり、化石燃料であるケロシンに対してSAFが十分な競争力を獲得し、有望とされるオフセット源が少なくなる2030年代である」と述べています。