2050年にCO2排出量ネットゼロ 航空業界で達成する鍵は

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航空輸送による二酸化炭素排出量をオフセットする


IATAによると、航空業界は排出源での二酸化炭素排出を完全に除去することはできないため、さまざまなオフセットメカニズムを使い、残る排出量を抑制する必要があります。これは、別の場所の二酸化炭素排出量を削減するために資金を提供することで、排出量を相殺するプロセスです。

ICAOが2016年に採択した国際民間航空のカーボン・オフセット及び削減スキーム(CORSIA(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation))は、すべてのセクターで世界初となる市場ベースの措置として注目されています。IATAは、「CORSIAの目的は、2021年からオフセットプログラムを用いて、国際民間航空による実質的な二酸化炭素排出量を2019年水準で安定させることを目指す」と述べています。また、「SAFのような新技術が普及すれば、オフセットの必要性は少なくなると考えられる」としています。


航空業界は、さまざまな方法でネットゼロエミッションを達成することを目指しています。 Image: IATA

電気と水素が航空機の排出量削減に貢献


航空会社の二酸化炭素排出量の17%以上を占めている、航続距離600マイル未満の短距離便に関しては、電気や水素を燃料とする航空機などの新技術も開発されています。航空機による二酸化炭素排出量の半分以上を占める航続距離2500マイル未満のフライトは、すべて電気または水素を燃料とすることが可能と考えられています。

欧州の大手航空会社エアバスは、水素を燃料とするゼロエミッションの民間航空機を3種類開発しており、2035年の就航を目指しています。航続距離1000海里以上で乗客数最大100人のターボプロップ機、航続距離2000海里以上で乗客数120~200人のターボファン設計、そして航続距離2000海里以上で乗客数最大200人の「ブレンデッドウィングボディデザイン」の3種です。

しかし、水素をカーボンニュートラルな航空燃料とするためには、持続可能な方法で製造することが必要です。クライメートワークス財団は、「航空セクターで必要とされる大幅な炭素排出量削減を達成するためには、グリーン水素(再生可能エネルギーを利用して製造された水素)の利用を促進する必要がある」と述べています。

SAFを採用する企業の数を増加させるには、航空業界の炭素排出量削減を加速させる有効な道筋について、ビジネスと政府のリーダーが合意する必要があります。クリーン・スカイズ・フォー・トゥモロー・コアリションは、持続可能な航空燃料の導入を加速させることで、2050年までに航空機からの炭素排出ネットゼロへの移行を目指すグローバルなイニシアチブです。世界経済フォーラムが共同主導するこのコアリションに参加した100社以上の企業は、世界の航空業界におけるSAFの割合を2030年までに10%に増加させることを目指しています。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Stefan Ellerbeck, Senior Writer, Formative Content

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