テクノロジーとの組み合わせ、そして金融業界が金融サービスの利用に関係なく個人と企業の両方向けに新しいソリューションを生み出しているなかで、成長市場はアジアにおけるフィンテックを語る上で欠かせない要素だ。
先進市場では、新しいソリューションは多くの場合すでに銀行口座を持っている個人に利便性をもたらす。さらに重要なことに、新しいソリューションは従来のプロバイダにサービスのレベルアップを促すような競争の要素ももたらす。
新興市場では、デジタル金融サービス(DFS)の成長が金融包摂に多大なプラスの影響を及ぼしている。数字は成功を示している。小口決済インフラの統合決済インターフェース(UPI)だけでも、現代史における他のどの取り組みよりも短期間に多くの人々を金融システムに取り込むことができた。
このような進展により、金融包摂の意味合いも変化している。金融包摂とは、広義には個人が従来の金融サービス(今日では従来の銀行、ノンバンク金融機関、またはそのデジタル版のいずれかを通じて)にアクセスできることだ。世界銀行のデータが示すように、多くの国で金融包摂の実現に向けて前進している。
したがって、業界が進歩するためには、より広範な金融商品やサービスを含めるべく従来の金融包摂の定義を発展させなければならない。つまり、金融包摂の将来は従来の金融サービスだけでなく、金融業界が提供するすべての商品・サービスを利用できるようになるというものだ。
フィンテックはこの未来に不可欠な存在であり、実際、すでに存在している。インドではUPIを利用している事業者への融資を可能にするスタートアップが存在する。シンガポールでは、デジタル資産管理はリアル決済システムのPayNow(ペイナウ)を使って投資家がより簡単に資金移動できるようにしている。アジア地域全体で機敏なスタートアップがテクノロジーを活用して顧客体験を再定義している。
だからといって、この道のりが簡単というわけではない。今後数年間は地政学的、そして経済的に困難が予想される。VCの資金調達は、業界がより精選するようになり、そして持続可能なビジネスモデルに焦点を当てるようになったため、難しくなっている。
フィンテックは、凝っているが最終的には不必要なテクノロジーに頼るのではなく、摩擦点を解決するソリューションを構築するために基本に立ち返り、顧客の問題に注力しなければならない。それは、逆境に直面したときの回復力だ。革新的でありながら、同時に持続的でなければならない。
その絶妙なバランス感覚を持ったフィンテックが生き残ることができる。
(forbes.com 原文)