ビジネス

2022.12.29

ソニーホンダモビリティが目指す立ち位置とビジネス

CESプレスカンファレンスにて





「モビリティを中心としたサービス基盤構築」が狙い


ソニーホンダモビリティが開発しているEVの基本的な技術アーキテクチャは、これまでソニーモビリティがアナウンスしていたものに極めて近い。川西氏も「それほど大きくは変わらない」と話す。

既存の自動車制御システムをリファインするのではなく、ゼロベースでシステムのアーキテクチャとソフトウェアのアーキテクチャ再構築し、5Gネットワークとの接続性やシステムアップデートの柔軟性を重視した高速・広帯域の新しいシステムは、VISION-Sで培ってきた技術の延長線にある。

その根幹にあるのは”移動する道具”そのものよりも、”移動という行為”に伴う体験の質を高めることにあり、そこにソニーグループとホンダが手を組んで、既存の枠組みとは異なる新しい価値を生み出すプラットフォームを提供できると川西氏はいう。

つまり”EV”という商品はソニーホンダモビリティにとって、大きな要素ではあるが、事業の根幹を成すのはサービスプラットフォームということだ。サービスプラットフォームにEV、あるいは将来の様々なモビリティが加わり、人が移動することに伴うエンターテインメントからローカルサービスの案内、あるいは保険などのサービスがつながり、連動していく。

設立時に話していた「オープンに様々なパートナー企業が参入できる」プラットフォームの構築を目指すという言葉も、モビリティに伴う多様な業種のパートナーが容易に参加できるようにすることを意図したものだ。



「数年」ではなく「数十年」で考えるゲームチェンジ


技術的には半導体、ソフトウェア、サービスの枠組みがあり、そこにサービスAPIを整えてプラットフォームとしての拡張性を整えつつ、ハードウェアの開発を行なっていくことになるが、川西氏は数年をかけて製品やサービスを開発することがゴールではないことを強調する。

「EVは一度販売すれば10年は使われます。保守も含めれば20年。長期のお付き合いが発生する事業ですから、短絡的な思考で将来像は描いていません(川西氏)」

2023年1月、米ラスベガスで開催されるCES 2023で、ソニーホンダモビリティとして最初の展示を行う予定だが、展示されるハードウェアは戦略上のご一部分でしかない。

「今後、様々な形で新しいモビリティを生み出すベンチャーが生まれるでしょう。付加価値は”メカ”から”エレクトロニクス”へと移り変わり、ソフトウェアやサービスの価値比重が高まります」

そう話す川西氏は、かつてプレイステーション事業がネットワーク中心に変遷する背景を支えてきた。今やプレイステーション事業は、ハードウェアプラットフォームを基本としながらも、ネットワークサービスに根ざしたプラットフォーム事業に変化している。

これは同じく川西氏が立ち上げた第二期のaibo事業にも類似する。ソニーグループとホンダが手を組んで生まれたソニーホンダモビリティは、まだその形を形成する途上だ。しかし、ハードウェアを開発しつつも、事業の主体はサービスプラットフォームにあるという話の先にあるビジョンはCESで見えてくるだろう。

松村敦

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