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2023.01.01

待望の初孫を迎えるビル・ゲイツが語る「未来への取り組み」

Photo by YOSHIKAZU TSUNO/Gamma-Rapho via Getty Images


小児死亡率を低下させる


ゲイツによると世界の小児死亡数は、2000年以降に半減しているが、生後30日以内の乳児の死亡率はあまり下がっていないという。この問題を改善するためにゲイツ財団はパートナーと協力し、発展途上国における使用を前提とした、小型の超音波診断ツールを開発した。このデバイスは携帯電話やタブレットに接続可能でプローブと呼ばれる端子を妊娠中の母親の腹部にあてて測定を行う。

「このソフトウェアを使えば、逆子やへその緒の位置がずれているなどの問題を検出できる。さらに、妊娠がハイリスクかどうか、出産に帝王切開が必要かどうかも確認できる」とゲイツは述べた。

ゲイツ財団は、グーグルや超音波診断のハードウェアを製造するフィリップスと協力し、このAIソフトを開発し、ケニアと南アフリカでテストを行っている。その結果、有用性が実証できれば2~3年をかけて広範囲な導入に向けた準備を進めていく計画だ。

遺伝子治療によるHIVの根絶


HIVの治療法を見つけることは長年の目標だが、その実現までの道のりは長い。ゲイツは、人の遺伝子の一部に編集を加える遺伝子治療の進歩が実を結ぶかもしれないと考えている。

ゲイツ財団は、複数の学術機関やスタートアップに資金を提供するほか、ノバルティス社や国立衛生研究所と遺伝子治療に関する提携を結び、一回の注射でウイルスを根絶することを目指している。ゲイツは「これらのアプローチのいずれもが安全で効果的であると証明されるまでには、まだ長い年月が必要だ」と述べている。

原子力活用と脱炭素への取り組み


ゲイツ財団以外では、ゲイツは自身の原子力関連のスタートアップの「テラパワー」にかなりの時間を注いでいる。テラパワーは、HALEUと呼ばれる高純度低濃縮ウランを燃料とする先進的な原子炉を設計し、その開発に注力している。ゲイツは、過去10年間で10億ドル強をこの会社に投資し、米国エネルギー省の資金援助を受けて、ワイオミング州に実証プラントを開発中だ。しかし、この原子炉が本当に成功するかどうかは、2030年以降まで分からないという。

ゲイツはまた、自身が2015年に設立した脱炭素を目指す組織の「ブレイクスルー・エナジー」についても熱く語る。この組織は、ジェフ・ベゾス、ヴィノッド・コスラ、ジョン・ドーアといった他のビリオネアの支援を受けて、100社以上のサステナブルな事業テーマを持つ企業を支援している。

ゲイツは、その中でもテスラの共同創業者のJB・ストラウベルが率いるリチウムイオン電池メーカーの「レッドウッド・マテリアルズ」と、10月に投資家から4億5000万ドルを調達した低コストのエネルギー貯蔵メーカーの「フォーム・エナジー(Form Energy)」の2社に注目している。これらの企業の利益は、気候変動への投資やゲイツ財団に還元されるとゲイツは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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