マイクロソフトの共同創業者で世界で6番目の富豪である彼は、自らが設立したビル&メリンダ・ゲイツ財団を通じ、人工知能(AI)や遺伝子治療などの新たなテクノロジーを支援し、さまざまな社会的課題に取り組んでいる。
前妻のメリンダ・フレンチ・ゲイツとともにゲイツ財団の共同会長を務めている彼は、昨年末に2023年の財団の予算計画を策定した。新たな年の予算は、22年の歴史を誇る財団にとって過去最大のものになるという。
ゲイツの長女のジェニファーは、2021年に馬術家のナイル・ナサールと結婚し、昨年11月に妊娠を発表した。2月に初孫を迎えるゲイツは今、将来の世代についてより一層具体的に考えている。
現在の保有資産が1030億ドル(約13.6兆円)と推定されるゲイツは、昨年7月に200億ドルをゲイツ財団に譲渡し、今後も生涯にわたり寄付を続けていくと宣言した。ここでは、ゲイツが熱心に取り組んでいる財団の取り組みをいくつか紹介する。
数学教育の活性化
ゲイツ財団は、世界の最貧国での医療活動で広く知られるが、米国の公教育の改善にも取り組んでおり、直近ではK-12(幼稚園年長から高校卒業までの13年間)の数学教育を飛躍的に向上させようとしている。
全米学力調査(NAEP)のデータによると、8年生(日本の中学2年生に相当)のうち数学が得意な生徒はわずか26%で、2019年から9ポイント下がり、過去20年近くで最低の数字になったという。
ゲイツ財団はこの問題に対処するため4年間で11億ドルを投じ、数学教育のあり方を見直すための支援を行うと発表した。財団は、教師の時間とスキルを最大限に活用するため、カーンアカデミーやZearn、Mastoryといった非営利のパートナーを支援し、数学をより楽しくするインタラクティブなツールの導入を推進する。ゲイツは、そこでAIが果たす役割にも期待している。
「AIは、生徒がどのようなことが理解でき、どのようなことが理解できないのかを把握するために役立ち、標準的なソフトウェア以上の学習効果を引き出せる」とゲイツは述べている。