ハリウッドの「多様性」重視 アジア系映画のヒットが続く理由

ディズニーの実写版「The Little Mermaid」のアリエルを演じたハリー・ベイリー(左)(Getty Images)

近年、米国のメディアやマーケティング業界でよく話題にのぼる言葉が「レプリゼンテーション」だ。映画やTV、広告などのさまざまなシーンにおいて多様性が十分に尊重されているかどうかを表すこの言葉は、業界の人間だけでなく生活者も注目するようになってきているという。

ここ数年で、映画や広告で多様性を描くストーリーやクリエイティブが多くなってきているが、米国の映画業界においては、アカデミー賞の作品賞の選考基準に「多様性」が設けられたことをはじめ、インクルーシブなキャスティングによる脱ステレオタイプな作品が脚光を浴びる機会も多くなっているようだ。

先日、11月にロサンゼルスで開催された「AMERICAN FILM MARKET」では、ハリウッド映画業界をはじめ、世界中からフィルムメーカーが集まり、現代の映画制作における課題をディスカッションするセッションが多数行われた。今回は、その中から、映画業界における多様性について、日本の私たちも示唆を得られるセッションを紹介する。

子供たちに希望を インクルーシブなストーリーテリング


「メッセージを伝えないストーリーテリングはない。意図的であろうとなかろうと、インスピレーションを与える力は、抑圧や悪意の源にもなり得るのです。ペンは剣よりも強しとはよく言ったもので、最強の武器の使い手として、私たちは常にメッセージに気を配る必要があります」

「When Films Change the World(映画が世界を変える時)」と題したセッションは、映画監督ジョージ・ルーカスと共に活躍した法務顧問Howard Roffman氏の言葉を引用して始まった。

この言葉が示唆するのは、映画をはじめメディアや広告で描かれる描写は、私たちの意識に一定のイメージを植え付けてきたことだろう。セッションでは、こうした背景も踏まえ、映画が社会に与えるインパクトをテーマにプロデューサーなどが意見を交わした。

興味深かったのは、映画における登場人物の描かれ方が子供達の教育やキャリアに影響を与えるという視点だ。

「テック系企業の代表といえば、マーク・ザッカーバーグやイーロン・マスクを連想するでしょう。私はIT業界でもっと多くのアフリカ系アメリカ人のリーダーを見たいと思っています。多様性が描かれたコンテンツを通して、子供たちは自分自身をそのストーリーに投影し、将来テック系企業のCEOになるといった希望やエネルギーを得られるのです」

こう語ったのは、Lion Forge AnimationのCEOであるDavid Steward II氏だ。これまで映画やメディアなどで描かれたステレオタイプが、型にはまった配役を助長している点を指摘し、より良い未来のために、あらゆる人種のクリエイターが集まり協調しながらストーリーを紡いでいく重要性を強調した。

ハリウッド
「AMERICAN FILM MARKET」が開催されたサンタモニカの会場
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文、写真=田辺敦子

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