ツイッター騒動でテスラにそっぽ向く米消費者

Photo illustration by Jonathan Raa/NurPhoto via Getty Images

調査会社エクスペリアンのまとめによると、米国の2022年1〜9月の軽量車(乗用車とライトトラック)登録台数は前年同期に比べ減っているが、電気自動車(EV)に限ると大幅に増えている。登録台数に占めるEVの割合も5.6%と、前年同期の3.1%から上がっている。

テスラが引き続き米国のEV市場を支配しており、同期のEV登録台数の65.4%を占めた。ただ、シェアは前々年同期の79.4%、前年同期の68.2%から下がってきている。

テスラはEV市場の拡大を背景に販売台数自体は引き続き大きく伸ばしているが、心配の種もある。

テスラの2022年7〜9月の納車台数は約34万3000台で、市場予想の35万8000台に届かなかった。完成車の輸送をめぐる環境が非常に厳しかったためと同社は説明している。おそらくその通りなのだろう。

だが、来年にかけては別の逆風にさらされるかもしれない。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)によるツイッター買収の影響だ。

マスクは10月27日にツイッターの買収を完了したあと、同社の経営や運営をめぐって次々に決定を下しては物議を醸している。それらの決定については間違っているとする意見が多いが、ここでの評価は差し控えよう。おおむね、リベラル派からは軽蔑され、保守派からは歓迎されていると言える。

そして、こうした状況がテスラの売り上げにも影を落とすおそれがある。

ピュー・リサーチ・センターの最近の世論調査によると、EVの購入を検討する率は民主党支持者のほうが共和党支持者よりも2.5倍ほど高いという結果になっている。実際、1〜9月の新車EV登録の3分の1超(35.9%)は民主党の強固な地盤であるカリフォルニア州でのものだった。

筆者の周りでも、ツイッターに関するマスクの決定が理由で、テスラ車の購入を考えるのをやめたという声を何人かから聞いたし、テスラ車の注文をキャンセルした人も複数知っている。ツイッターでも、同じように注文を取り消した人の投稿が何件も見つかる。今後、テスラの販売に何らかの影響が出てくるのは避けられそうにない。

ただ、テスラにとって有利な材料もある。ひとつは、競合他社はまだテスラに追いつく途上にあるという点だ。そのため、テスラの潜在顧客の相当数がほかの選択肢を探そうとした場合、その需要を満たせるだけの受け皿が足りなくなる。サプライチェーンの制約はなお自動車メーカーの生産拡大の足かせになっている。

もうひとつは、マスクによるツイッターの買収やその改革を支持している人も一定数いることだ。彼らはマスクを支持してテスラの車も買おうとするかもしれない。それでも、やはり共和党支持者は民主党支持者よりもEVを買う可能性がかなり低いわけだから、両陣営の懐事情も考えると、全体としてはテスラはさらにシェアを落としていく公算が大きい。

はっきりしているのは、テスラの今年の大幅な株価下落は、マスクの引き起こしたツイッターでの騒動が一因になっているということだ。テスラの株価は年初来62.5%下落しており、ナスダック総合株価指数の33.4%よりも落ち込みが激しい。

マスクによるツイッター買収完了後も、テスラの株価は33.4%下げている。この間のナスダックの下落幅は3.9%にとどまる。短期間でこれほど値下がりしている以上、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げだけが原因ではないのは明らかだ。

消費者のテスラ敬遠で生まれる需要を他社がうまく取り込んでいくことができれば、来年、EV市場でのテスラのシェアが急激に下がるという事態もあり得るのではないか。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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