ムクウェゲは次のように訴えた。「コンゴ民主共和国とアフリカ大湖地域(African Great Lakes region)において持続的な平和を構築するにあたり、犯罪が罰を受けない文化は大きな障害のひとつになっています」
「安定回復のための安全保障および政治的な解決策の失敗に直面したいまこそ、司法機構と、司法によらない補足的な機構を組み合わせ(中略)、コンゴ民主共和国における移行期正義(Transitional Justice:長年にわたる紛争や抑圧の中で発生した人権侵害の規模が大きすぎるため、通常の司法では対処しきれない場合に国家が行う取組み)のあらゆるメカニズムの価値を探るべきです」
残念ながら、ムクウェゲも強調しているように、コンゴ民主共和国の司法制度は、紛争下の性暴力が罰せられない現状に対応できる態勢ではない。腐敗、政治の干渉、独立の欠如により弱体化している。
ムクウェゲは英国議会の特別会議の場で、紛争下の性暴力が罰を受けないコンゴ民主共和国の目に余る状況への対処にあたって踏むべき法的段階について、包括的な青写真を提示した。
ムクウェゲは次のように述べている。「移行期正義のさまざまなメカニズムのうち、被害者とサバイバーがとりわけ必要としているもののひとつが、修復的司法(restorative justice)です。賠償はひとつの権利であり、司法の一手段でもあります。加えられた害を認識するとともに、被害者が治癒プロセスをまっとうし、尊厳を持って生活を再建できるように支援するためのものです」
コンゴ民主共和国でも見られるように、罪が罰を受けない現状は、被害者とサバイバーが直面せざるをえない悲しい現実だ。各国政府と国際社会はそれぞれ、可能な限りの法的手段により、もっと積極的に紛争下の性暴力に対処しなければならない。
何をすべきかはわかっている。最近では、ウクライナでのプーチン政権の残虐行為に対して、そうした法的メカニズムが適用されている。コンゴ民主共和国やその他の地域でも、紛争下の性暴力の被害者とサバイバーに同様のことをするべきなのだ。
(forbes.com 原文)