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2022.12.19

FTX破綻などで注目、仮想通貨になぜ「財布」が必要なのか

FTX創業者のサム・バンクマンフリード(Getty Images)

12月12日、中米のバハマで、経営破綻した暗号資産(仮想通貨)交換業者FTX創業者のサム・バンクマンフリードが逮捕された。バハマ政府の発表によれば、米捜査当局が身柄を引き受け、FTXのずさんな経営実態と破綻に至る経緯を明らかにするという。

FTXが破綻した影響は、さまざまなところに及んでいる。「仮想通貨は終わりだ」という声も聞かれるが、FTX崩壊による「仮想通貨氷河期説」が囁かれるなか、仮想通貨を守る「財布」に注目が集まっている。

急成長のハードウェアウォレット市場


そもそも暗号資産は、2008年の世界金融危機への反省をもとに構想された。その基盤には、真の個人的所有権と自立という考えがある。

暗号資産は個人が自らのウォレットの鍵を保有し、仲介業者抜きで取引できるのが特徴だ。しかし、多くの人たちはその利便性ゆえ、通貨を銀行に預けるのと同じように、取引所に暗号資産を預けてきた。

しかし、2014年のビットコイン交換所マウントゴックスの破産から始まり、今回のFTX破綻に至るまでの取引所のトラブルで、「自分のお金は自分が守る」という暗号資産の原則に立ち戻ろうという考えが、ここにきて加速している。

その流れを受けて普及し始めているのが、仮想通貨を通信環境から隔離した状態で保管することのできる専用デバイスであるハードウェアウォレットだ。

調査会社のストレイト・リサーチ(Straits Research)社によれば、世界のハードウェアウォレット市場は、2021年には2億4500万米ドル(約343億円)と評価されている。また2030年には17億2500万米ドル(約2415億円)に達し、予測期間中(2022年~2030年)に年平均成長率24.2%で成長を遂げると予測されている。

その裏には、ハッキングなどによるデジタル資産の盗難が年々増加しているという実態もある。

ブロックチェーン上の取引の分析・解析ソフトを開発するチェインアナリシス(Chainalysis)によれば、2020年から2021年にかけて、ほぼ6倍に相当する32億ドルの暗号資産が盗まれた。しかも、これは盗まれた暗号資産のほんの一部にすぎないという。この事実が、ハードウェアウォレット市場の成長を後押ししているとも言える。

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正しい知識とツールで資産を守る


暗号資産の取引所は、銀行のように、顧客に代わって仮想通貨を管理する。顧客は取引所を信頼する必要があり、そこからカギ(秘密鍵)が流出したら資産は守られなくなる。

ハードウェアウォレット使えば、この「財布」のなかに仮想通貨にアクセスするための秘密鍵を入れて、個人で管理することができる。たったこれだけで多くのリスクを軽減させることができるのだ。

気をつけたいのは、秘密鍵をなくしたら、資産を取り戻すことはできないということ。人によっては誰にも見せないために、耐火の金庫で保管する人もいるという。

暗号資産の「財布」はオンラインとオフラインの2種類がある。オンラインの場合、秘密鍵はインターネットに接続されたデバイスやシステムに保管される。スマホのウォレットやブラウザのウォレット、仮想通貨取引所が管理するカストディー用のウォレットなどが代表例だ。

このようなソフトウェアウォレットは手軽で便利だが、いくつかの欠点がある。特に、インターネットに常時つながっていることによって、ハッキングのリスクが上がる。
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文=雨宮百子

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