一方、オフラインで使用するハードウェアウォレットの場合、秘密鍵はインターネットから断絶されたところで管理される。このため、ハッキングのリスクはなくなる。
もし秘密鍵がオフラインのウォレットから盗まれる場合、ウォレットを実際にパソコンに接続し、操作するなどの物理的なアクセスが必要になる。さらに、PINコードなどの暗証番号が入力されないと、資産を盗むことはできない。つまり、セキュリティの度合いが格段に上がるのだ。さらに、ハードウェアウォレットの会社が破綻したとしても、自分の資産は守られることになる。
そもそも、仮想通貨を保有するということは、仮想通貨を使う権利を保有することを意味している。仮想通貨はブロックチェーン上に存在し、その仮想通貨にアクセスするための鍵の保管場所は、あなたが決められる。仮想通貨自体が、どこかのデバイスやプラットフォームに直接的に存在するというわけではない。つまり、その中に鍵を保管しているだけにすぎないのだ。
仮想通貨を「持ち歩く」時代に
このハードウェアウォレットを提供している会社の1つにレジャー(Ledger)がある。ファッションの中心地パリに本社がある同社は、顧客が「いつでも自分の資産を持ち歩きたくなる」ようなつくりをしている。ハイブランドのフェンディとコラボレーションするなど、ユニークなデザインも特徴だ。
レジャーでは、業界スタンダードの「BIP39」を利用している。BIP39は、ウォレットの秘密鍵をユーザーが安全に保管するために考案されたものだ。秘密鍵は、一般的にはとても複雑なので、普通の人には覚えにくい。また、書き写すにしても間違えやすく、PCやスマートフォンにデータを保存する以外の選択肢しかなかった。
BIP39を利用することで、複雑な秘密鍵を英単語や数値に変換し、パソコンなどには保管せず、ハードウェアウォレットに移すことで秘密鍵を安全に管理できる。ウォレットによってはBIP39に準拠していない独自規格のものもあるので、どのハードウェアウォレットを選ぶかは注意したい。
またBIP39を利用すれば、レジャーのウォレットを紛失しても、レジャーが倒産しても、リカバリーフレーズ(秘密鍵を読みやすい形で書き直したもの)さえ持っていれば、他のウォレットを使って仮想通貨にアクセスできる。
ハードウェアウォレットには、他にもクレジットカード型のハードウェアウォレットを提供するクール・ウォレット(Cool wallet)、世界最大の取引所バイナンスから出資を受けたセイフパル(Safepal)、チェコに拠点を置くSatoshi Labs社が開発するトレザー(Trezor)などがある。提供しているサービスの内容が各社で異なるので、自分の好みのものを選ぶといいだろう。
11月14日の記者会見で日本銀行の黒田東彦総裁は「暗号資産にかかるリスクはG7でも指摘されている。規制面での対応について、早急に作業を進めていく必要がある」との認識を示した。暗号資産への規制は、今後強まっていくことが予想される。
とはいえ、暗号資産を中心にはじまったWeb3革命は、今後も根強い支持者によって上がり下がりを経ながらも、成長していく可能性は高い。それは、より分散化した、よりユーザーが中心となった、より安全な時代になるということだ。
FTXの崩壊は、仮想通貨の本質を思い出させたが、ここからWeb3の新しいチャプターが始まるのかもしれない。