ビジネス

2022.12.15

アフターデジタル著者が提唱する、新しい行動支援「ジャーニーシフト」とは

深津貴之(左)と藤井保文(右)

「ビービット」東アジア営業責任者の藤井保文が、12月15日にビジネス書「ジャーニーシフト」を上梓する。

東京、上海、台北の3都市で活動中の藤井は、加速するDX時代に、世界や社会変化に適応するために日本企業が理解すべきポイントに斬り込んだビジネス書「アフターデジタル」が累計発行部数22万部の人気シリーズ著者。

画像生成AIから見る、意味生成の在り方と、これからの時代を生き抜く企業の在り方を「note」をはじめ、数多くのサービスを手掛けた「THE GUILD」代表・深津貴之との対談で迫る。

深津貴之 x 藤井保文との対談


1984年に生まれ、東京大学大学院情報学環・学際情報学府・修士課程修了後、ビービットにコンサルタントとして入社した藤井保文は、製品やシステムやサービスの利用を通じてユーザーが得る体験となるUX(ユーザーエクスペリエンス)思想を探求し、企業や政府へも提言している人物。UXの有識者が世界中から参加するオンライン・カンファレンスを開催するなど、新しい時代へ向けて、精力的に人と社会の在り方を模索している。

一方、UIやUXの世界に於いて、その名を知られるTHE GUILD代表、深津貴之。デザイナーとして高い評価を受ける深津貴之との対談の内容とは?

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画像生成AIから見る意味性へのシフト


藤井:今回の著書「ジャーニーシフト」では、これからの時代は、企業が単体の製品やサービスではなく、ユーザーの一連の行動フローを支えることが価値になる、という「行動支援」を提唱しています。この行動支援に関して、大きく2つの潮流があり、「不便を解決する利便性のレイヤー」と「自分らしく生きる意味性のレイヤー」に分けています。

深津さんは、UXに関する支援を企業向けにされていらっしゃいますが、単に不便の解決から始まったサービスや事業に対して「より豊かな意味を持たせようか」「行動支援に繋げていこうか」という文脈になることはありますか?

深津:ありますね。UXピラミッドは、下から「機能的(FUNCTIONAL)」「安心・安全(RELIABLE)」「使いやすい(USABLE)」「便利(CONVENIENT)」「楽しい(PLEASURABLE)」「意義・意味がある(MEANINGFUL)」と順番に並んでいますが、新築マンションのチラシについている「マンションのコピーの理屈」も同様です。

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出所:『ジャーニーシフト』

立地で戦える時には「駅に直結」とか機能的な話から入りますが、そのレイヤーで戦えなくなると「オートロック」みたいな安全性の話になる。そして最終的に、競合に差をつけられなくなると「光り輝く夢の○○」のような、夢の話になるのです。いまや、GoogleもAppleもFacebookも皆キレイで機能もトントンで差がつかない。すると、意味とか人生の話をせざるを得なくなってくるということです。

藤井:なるほど。本編の中でも、成熟市場に於ける意味を持つことの重要度が増してきたり、複雑なコンテキストを持つ話を書いています。例えば、D2C。SNSでプラットフォームが整い、「Shopify」や「STORES」でECサイトが誰でも作れるようになった。そこで勝負となるのが「世界観」になってくるのです。だからD2Cブランドは、どこもオリジナルのストーリーや価値観をしっかり持っていますね。

深津:NFTだって、市場があやふやで不安定な状態だったら「絶対儲かるNFT」みたいな文句が出てくるはずです。でも今は、もうそこで勝負がつかなくなっているから「持つことの幸せ」と言い出すのですよね。
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文=中村麻美

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