ビジネス

2022.12.15

アフターデジタル著者が提唱する、新しい行動支援「ジャーニーシフト」とは

深津貴之(左)と藤井保文(右)


藤井:深津さんがCXOを務めている「note」にしても、ECプラットフォーム「Shopify」や、Webサイトを作れる「Wix」にしても、意味生成のプラットフォームになっている、と私は解釈しています。こういう大きな戦い方をするのは、本来は大企業がとるべき戦い方なのではと思うのですが、どうでしょう?大企業の戦い方は、他にもあるのでしょうか?

深津:ありそうな気がしますね。例えば、シンプルに出資するのもひとつの手ではないでしょうか。

藤井:なるほど。プレイヤーを資金面や活動面で支える機能が重要になるということですね。だから大企業は、無理に意味性で勝負せず、意味性のプレイヤー支援をする考え方の方がうまくいくのかな、と。

深津:ローカルブランドに対して、必要に応じて工場スペースや生産ロットを提供し、オリジナル商品を作れるSaaSサービスを大きい飲料メーカーやアパレルメーカーがやるのは、アリだと思いますね。

藤井:インドネシアでここ2、3年で注目されているのは、ECのプレイヤーが家族経営のワルン(個人商店)を支えるビジネスモデルです。ECプレイヤーが仕入れの面倒をみることで、約250万店舗が生き残れていて、ワルン効率化のプラットフォームを作っているのです。これは、意味生成時代の大企業の在り方と繋がったように思います。

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今後の課題は、選択肢の多いプラットフォームと大企業の支援


深津:「note」は、クリエイターの方々のプラットフォームを目指していますが、一方でハッシュタグやトップページの編集など、さまざまな部分で意味性を加速する設計を意識しています。

藤井:意味性を作っていくためのUXって、人に伝えるのが難しいですよね。

深津:Facebookという凝縮性が高いコミュニティを作った会社が、なぜ「Horizon World」で同じことができないのか問題ですよね。VR空間は制約条件がないことが価値なのに、リアルをコピーしたら制約条件をそのままVRに持ち込むことになってしまい、その結果、ユーザー数が伸び悩んでいるといわれています。

藤井:結局、今のFacebookが意味性のプレイヤーでなく、利便性のプレイヤーだったとすると、企業規模と意味性の両立は簡単ではない結論になるかもしれませんね。創業社長みたいに、強い意見とリーダーシップを持って皆を動かせる人なら、意味性を作れるのか?あるいは、意味というのは、共有するためには難易度が高いから、規模が大きいと意味性が作れないのか?

深津:そういう意味では、「10億人に共通した意味を作る」のは、非常に難しいでしょうね。

藤井:メタバースにしても、フォートナイトみたいなスタイルが好きな人もいれば、ボアードエイプを好む人もいるし。色々な意味性を、いかにひとつのプラットフォームの中に選択肢として用意できるかが、今後の課題かもしれません。画像生成AIを軸に、意味性が膨らんでいくなか、小さい規模では、意味性で勝負していける可能性が増えています。

一方、大企業の観点からは、人々が意味性を生み出すことを支援するインフラやプラットフォーマーへの道筋が重要だという示唆が、今回クリアに描けました。深津さん、貴重なお話をありがとうございました。

文=中村麻美

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