自閉症当事者が語る「共に生きる道」

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──具体的には、どのようなスキルを学びましたか?

例えば、多くの人々がいる騒々しい部屋にいる場合、壁際に行くのです。また、たくさんの人が歩いている側から歩いていない側へと移動したりもします。これはアイコンタクトや音から身を守るために行うスキルで、“フライト・レスポンス”と呼ばれています。

なかには、アイコンタクトを避けるためにメガネをかけたり、音を避けるためにイヤホンをつけたりする人もいます。また精神面では、自分はユニークな能力をもっているのだと自分自身を受容することも重要でした。

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エミール・ガウス(Emile Gouws photo)

社会に貢献する大きなパワーに


──社会がASDの人々を受け入れるためには、何が必要だと思われますか?

国連の障害者権利条約(CRPD)にはすべての人々が同じ機会にアクセスできるインクルーシブ教育の必要性が規定されていますが、ASDの人々は同じ機会を得られていません。

この問題を解決するには、学校、親、セラピストの3者が協力して取り組む体制づくりが必要です。学校はASDの人々に特化したカリキュラムを提供し、少人数のクラスで、彼らが学ぶべきスキル別の授業を繰り返し行うことが重要です。ASDを抱える家族や知人がいる教師を置いたり、親をサポートしたりすることも重要です。この3者をつなぎ、国の教育省に働きかけるNPOの存在も必要です。

──今後力を入れていきたい活動は?

政治家とASDの人々との間にあるギャップを埋めていきたい。彼らが教育にアクセスするのに必要な政策や法律を決定する際のキーメンバーになりたいのです。彼らが社会に受け入れられる権利を獲得できるよう闘っていきたい。そんな権利を得られれば、彼らは、社会に貢献する大きなパワーになれるのですから。


エミール・ガウス◎プレトリア大学(南アフリカ)で教育学博士号を取得、自閉スペクトラム症の当事者であり、アドボケーター。コモンウェルス障害者フォーラムメンバー、ウィットウォーターズランド大学名誉講師。

文=飯塚真紀子

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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