「エネルギー王」の時代は終わりを告げようとしている─石油とガスが、ロシアの武器ではなくなった理由

Amilcar Orfali / Getty Images

ロシアの炭化水素に有望な市場はあるのか?


ナイーブなサウジアラビア支持者とプーチンとの石油の共謀も、同様に見通しは暗い。OPEC+諸国の生産量が、日量200万バレル減少しているのに対して、米国は原油を増産させている。これは、世界の石油供給におけるサウジアラビアとロシアの力が、もはやかつてのようなものではないということを意味する。

米国は初めて、サウジアラビアより多くの石油を生産するようになった(米国:日量1180万バレル/EIAデータ、サウジアラビア:1100万バレル/ゴールドマン・サックス)。2022年から2023年にかけて、米国は石油採掘の記録を更新する。UEAによると 、2023年に米国の平均生産量は日量1260万バレルに到達するという。稼働中の石油リグの数は、2022年に50%増加し、米国は今年度、日量ほぼ100万バレルの追加生産を開始した。

もちろん、世界は、世界の供給量の10%を占めるサウジアラビアの石油を必要としている。しかし、サウジアラビアとロシアの影響力は以前ほど強くはない。減産という誤った決断は、望ましい効果をもたらさないだろう。西側の同盟諸国は依然として一致団結して、ウクライナを支持し続けるであろう。

冷戦の真っ最中であってもソ連は、信頼性があり、安定したエネルギー資源の供給者としての評判を維持しようとしていた。しかし、買い手にとっては、信頼できない供給者よりも、新たな供給源─新たな販売市場を見つけることのほうが常に容易である。ましてや、供給者が世界的に追放された身であるならなおさらだ。

ここ数ヶ月のプーチンの過ちによって、エネルギー資源の信頼できる輸出国としてのロシアの評判は、完全に失われてしまった。それらを武器として利用するロシアの戦略は、まもなく終焉を迎えるだろう。

(本稿は、9月17日にニューヨークで開催されたKSE財団主催の討論会の内容をもとに執筆したものである。)

編集=石井節子

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