ビジネス

2022.12.08 10:30

暗号資産業界にまだまだ「冬の風」は吹き続ける


このように預金者の資産にアクセスできてしまうことが、まさに銀行が破綻する理由であり、昔から破綻してきた理由なのだ。短期間の借入と長期間の貸付は、銀行の状況が悪いときや、過度にもしくは楽観的にこれらを行ってしまっている場合に、銀行の運命を決定づけるのに十分なほどの影響力をもつ。銀行を金融の崖っぷちに立たせるような、(昔からある)銀行に浸透している犯罪的な内部の腐敗さえ必要ないということだ。だからこそ連邦準備制度があるのだ。困難な時期になると、派手なデリバティブや不正なトレーダーがいなくとも、銀行の暴走によって金融システム全体がメルトダウンしてしまうからだ。

2008年以来、銀行はその不正行為で5兆ドル(約686兆円)の罰金を科され、(昔から)規制当局がその上を這いずり回っている。では、派手でリスクを取る起業家のグループが、銀行家がその逃れられない重力に吸い込まれたのと同じ渦に巻き込まれないという希望は、中央集権的な暗号資産の業界にあるのだろう? それはないだろう。

ある取引所では、預金者の資金を他のプレイヤーのプロジェクトや製品、ポンジ(「出資を募るも実際の運用はなく、新しい出資者からの出資金を配当金として支払いながら、破綻することを前提にお金を騙し取る手法)に注ぎ込み、レバレッジがこれらの暗号資産から溶けると、急降下する。取引所がVoyager(ボイジャー)のような倒産した会社を買おうとするとき、そのお金はどこから来るのだろうか? 利益? YouTube上での広告は? 巨大なオフィスは? 2000人の従業員は? 果たしてその資本はすべて利益からきているのだろうか?

Coinbase(コインベース)はVCから5億ドル(約687億円)を調達した。他の大企業はどうだろう? FTXが80億ドル(約1兆990億円)を吹き飛ばしたのは、預金者のお金でプロジェクトを買って開始し、必要な支払いを行い、社内の資産を巨額の評価額で洗い替えしたことが原因だ。ただこの先、こうなるのがFTXだけじゃないということが明らかになるだろう。

つまり現在、さまざまな大企業が崖から遠く離れた場所で空中浮遊しているような状況なのだ。

多くの時間が経過しても誰も谷底に落ちるようなことがなかったり、あるいは別の失敗によって多くの企業が破産するような最終局面に陥らない限り、私は再びコインを買い始めるつもりはない。

そろそろ本当に始まるはずで、そうなれば底値は6000〜8000ドル(約82万5000〜約110万円)だ。そうでなければ、神様が味方してくれたということになるだろう。

forbes.com 原文

翻訳=Akihito Mizukoshi

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