124億光年の彼方で星を引き裂く巨大ブラックホールを観測

ブラックホールが太陽類似星をバラバラにする「潮汐破壊現象」のイメージ図(Carl Knox – OzGrav, ARC Centre of Excellence for Gravitational Wave Discovery, Swinburne University of Technology)

天文学者たちは、はるか彼方の超大質量ブラックホールが恒星をバラバラにして、光速に近いの光の噴射を発生させる強力な「潮汐破壊現象(TDE)」を観察するという驚くべき機会に遭遇した。

この稀な現象はこれまでたった4回した観測されていない。

ブラックホールとは、重力があまりに強いために光でさえも逃げ出すことのできない宇宙の領域だ。ブラックホールが恒星を高速で引っぱり込み、破壊することを「潮汐破壊現象」という。

恒星が分解されると、その物質はブラックホールの降着円盤の中に落ちていき、円盤はわずかに拡大する。その次に起きる光速に近い速度で移動する輝く物質の強力な噴射を時々見ることができる。

今回、天文学者たちがこの幸運な観測で見ることができたのはそれだ。今週NatureとNature Astronomyで発表された2つの論文(1つめ2つめ)の著者らは、それをST2022cmcと呼んでいる。


 
AT2022cmcは、2022年2月11日に124億光年という驚くべき距離で起きた。これまでに観測されたもののほとんどはずっと近かった。

最初に発見したカリフォルニアのZwicky Transient Facility(ZTF)をはじめ、ハワイにあるNASAが支援するAsteroid Terrestrial-impact Last Alert System (ATLAS、小惑星地球衝突最終警報システム)、ニューメキシコ州の電波望遠鏡、Karl G. Jansky Very Large Array (VLA)、チリのESO超大型望遠鏡VLTなどで観測されたのは、その驚くべき明るさのためだ。

可視光で検出・観測されたが、軌道を周回する観測衛星ニール・ゲーレルス・スウィフトによってX線でも観測されている。このX線データから、天文学者は極端なエネルギーが関わっていることをを突き止めることができた。

AT2022cmは、太陽類似星が比較的低質量のブラックホールに攻撃された結果だと考えられている。関係する物理現象を科学者らがモデル化して計算した結果、AT2022cmcに見られる「宇宙ジェット」は、わずか1%の潮汐破壊現象で起きる現象であることがわかり、その稀少性が裏づけられた。

澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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