予算1兆円!経営者の武器となる「リスキリング」とは?

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もはや「コロナだから!」ではない。世界的な緊急課題


2020年1月、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、「2030年までに全世界で100億人をリスキリングする」と宣言されました。このことによって、世界中の人々がDX人材の育成に不可欠なリスキリングの重要性に気付くきっかけとなったのです。コロナによってオンライン化やDX、リスキリングが進んだと思っている方も多いのですが、この宣言は、実は新型コロナウイルスによるパンデミックが本格的に始まる前の話です。

もし、あなたが現時点で「リスキリング」を意識していなかったとしたら、相当に情報収集に遅れをとっているといっても過言ではないでしょう。

想像してみてください。あなたは、上に行きたいのに、下りエスカレーターに乗っているようなものです。そのまま立ち止まっていたら下に落ちてしまいますよね。「いままでと同じ努力を重ねているのに、なかなか成果が出ない」と悩んでいる方も多くいらっしゃることでしょうが、その理由は、ここにあります。あなたの生産性があがっていないのに、周りはデジタル化によって生産性を上げ続けているので、相対的に遅れをとってしまっている、ということなのです。

社会は年単位でなく、月単位でもなく、一日単位でめまぐるしく新しい情報が飛び交い変化しているのです。それなのに、現状維持とばかり、若いころに得たスキルだけで、同じことを続けているならば、あっという間にエスカレーターの下に落ちてしまいます。仕事で成果を出したいなら下りエスカレーターを駆け上がる行為で、やっと追いつくくらいのスピード。だからこそ、いま学び直し=リスキリングが必要とされるのです。

日本と欧米のデジタル構造の違いとは?


20世紀、近代工業化を最も成功させた2大国と言えば、日本とアメリカです。ところが、近代工業化において、日本とアメリカの国民性のアプローチの違いは顕著です。アメリカは多国籍で言語も文化も多様であるため、システムをシンプルに作らないと処理できません。実際、欧米人の一般労働者に複雑な処理を任せると、とても時間がかかります。例えば、かつて、お土産屋さんで126ドルの商品を買って、日本的な感覚で131ドルの現金を渡すと、相手はお釣りの計算ができずに混乱してしまう、そんなことがよくありました。

だから、考えなくても誰でもできるシンプルで分かりやすいシステムが好まれます。もちろん優秀な欧米人は、ものすごく優秀ですが、一般的な社員が、スピーディに簡単に処理できるシステムが必要とされたからこそ、欧米でのデジタル化が急速に進んだわけです。欧米人、黒人、アジア人で構成された社会は、言葉や理解力が異なります。だから誰でも簡単に操作できるプロセスをマニュアル化やシステム化することが近代工業化において求められたのです。

一方、日本人は、とても器用だし、一般労働者の基本能力が高い。126円の商品で131円受け取ったら、即座に計算して5円のお釣りを渡せるでしょう。ツーと言えばカーと言う、相手のニュアンスを感じとる理解能力が高いのが日本文化です。この強みは、仕事にも活かされていて、日本人は自分たちでエクセルなどを使って、簡単に独自のツールを作ってしまうことができる。

が、ゆえに、誰もが使える汎用的な処理にならず、自分たちしか処理できない複雑な表計算ができあがってしまって、シンプルなマニュアル化やシステム化が進まない、という側面もあります。この変に器用な国民性が、デジタル化の加速に立ち遅れる要因になったのかもしれないと私は考えています。
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文=中村麻美

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