予算1兆円!経営者の武器となる「リスキリング」とは?

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リスキリングの重要性を考える「日経リスキリングサミット」に岸田総理がオンライン出席したり、「リスキリングに1兆円」という記事(2022年10月22日)が日本経済新聞の一面を飾る昨今。「リスキリング」とは、簡単に言えば「新しいデジタル時代に適応したスキルを取得すること」を意味します。

では、いまなぜ学び直すことが求められるのか?「持続可能な経営」を実現するために、経営者やリーダーがとるべき具体的行動について、今月は、語って参りたいと思います。


デジタルツールとスキルのアップデートを今すぐ!


「リスキリング」(Re-skilling)の背景にあるのは、デジタル社会の到来です。例えば、会社の中の経理部門を、ひとつ例にとってみましょう。これからの時代は、いまさら言うまでもなく、紙での処理からペーパーレスの経理処理への移行が求められます。電卓での計算が早くなった!といった方向性での「スキルアップ」(Skill-up)ではなく、オンラインでの決済および決算や電子承認を使えないとお話になりません。

電卓を使えればOKだった業務は、もはや過去のことです。さらに言えば、経理はデジタルを使いこなすだけでOKか?といえば、NO。これからの時代は、自ら業務プロセスを設計し、システムやAI、ロボティクスなどのツールも理解したうえで「実務をデジタルに変革できるスキル」が求められているのです。

また、ビジネスをスケールアップするうえで、より重要視されるようになった「マーケティング」においても、単なる「スキルアップ」ではもう追いついていけません。これまでの時代は、広告代理店に発注し、マーケティングを外注して、広告クリエイティブに多少の口出しをしてビジネス展開することでなりたっていたかもしれません。

が、これからは、自分自身でデジタル・マーケティングを理解し、設計し、実務を運用することが求められ、MA(マーケティングオートメーション)ツールやSNSを自由に使いこなせるようにならないと完全に立ち遅れてしまう時代となりました。なぜなら、「マーケティング」はもはや習得必須な基礎スキルとなっており、大企業のみならず、中小企業や個人事業主までもが、自分たちで「デジタルマーケティング」をするようになってきたからです。

つまり、社会人になってからの若いころに学んだスキルは、人生100年時代といわれる現在、いま急激なアップデートが求められているわけです。私自身、約25年前、社会に出て、初めて営業職として会社から支給された当時の最先端ビジネスツールは、「ポケベル」でした。外回り中、スーツのポケットからブルブルと鳴るポケベル。

数字の「49」が表示されたら「至急」の意味です。慌てて会社に「公衆電話」からテレフォンカードを使って連絡をした過去を感慨深く思い出します。その時代は、eメールも一般化しておらず、ひとり1台のPCがないオフィスもあったり、メールができない上司の代わりに、秘書が相手先に代筆メールを送る、なんてことも多々ありました。

そのうち「会社として、メルマガくらいやらないとまずい」という流れを経て、ツイッターやFacebookなどのSNS、さらにYouTube時代へと突入するのです。ところが、現在は高校生がスマホで簡単に動画を撮影し、友人に交換日記のように自撮りの動画をインスタグラムで共有する時代。これから、デジタルネイティブな世代や、z世代が消費の中核をなすように急変している時代背景において、当然、ビジネスにおいても日進月歩で広がるデジタルツールに対する学び直し、つまり「リスキリング」が求められているのは、あえて言うまでもない緊急課題なのです。
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文=中村麻美

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