バイオテック分野の連続起業家らが1999年に米ケンブリッジで創業。2010年頃にはベンチャークリエイションの仕組みを形成し、100以上の企業を生み出し、25件が上場しています。ヒューマン・ヘルスとサステイナビリティにフォーカスし、イノベーションのための能力と社を起こす人材・成長させる人材、そして資本を集結させることを標榜しています。
1999年の創業以来9本のファンドを集め、直近(2021年7月設立)のファンドVIIの運用額は$3.37B(5千億円弱)に上ります。その時点で運用資産の総評価額は$14.1B(約2兆円)となっています。そして、米国ビジネス誌Fast Companyの「世界で最もイノベーティブな会社」2022ランキングで第2位に選ばれました。
また、例えばARCH Venture Partnersが、2021年のファンドXIの$1.94B(3千億円弱)に続き2022年にファンドXIIの$2.98B(4千億円強)を集め、厳しいと言われる市況にもかかわらず、ベンチャークリエイション型VCの勢いを示しています。
フラッグシップ社のベンチャークリエーションのやり方は次の4ステップ。
1. Explorations=仮説構築のための探索:アカデミア、スタートアップ、大企業とアイデアを議論し、質量ともに豊富なフィードバックを得る(ラボでの作業はなし)。年80〜100の仮説をつくる。
2. ProtoCo=鍵となる実験を行うプロトタイピング会社(9〜12カ月間):有望な仮説から年8〜10社をつくり、それぞれに100〜150万ドルを投資する。6〜7人チームで創設し、ラボでの実験により仮説を検証し、IP(知的財産)化する。失敗を奨励。
3. NewCo=新会社:フラッグシップ社のメンバーがリーダーとなる。探索チームは継続。サイエンスのリーダーの下でより大規模なチームを編成する。フラッグシップから2500万ドル以上を追加投資し、2年程度の期間をかける。年6〜8社。
4. GrowthCo=正式なローンチ:外部からCEOを招聘し、社外取締役を含むボードを編成。戦略の実行と新たなイノベーションの両方を。フラッグシップから自立。年6〜7社。
このように、仮説をそのまま受け入れるわけではありません。まず徹底的に可能性や課題を検討して仮説をつくり、自らのラボと科学者を使って仮説を検証するのです。その後、本格的に資金を投じ、自ら体制づくりをするという、いわゆるハンズオンを遥かに超えたベンチャークリエーションを実施しています。
同社では、常時30人以上の科学者を募集し、在籍数は3桁。中堅製薬会社クラスの規模と言われています。
金融危機が契機に
小柳教授は「これほど大規模で、かつ製薬企業も初期から集まって、ということができるようになったのは、2008年の金融危機がきっかけだと分析しています。お金が集まらなくなり、よりロジカルにリスクが低いやり方が求められるようになった。
すると、アーリーステージに数多く投資するという従来の論理は受け入れ難くなった。そこで、こういう流れが出てきたと考えています」
成長ポテンシャルを追求するには、このように投資育成する側のイノベーションが日本でも求められるのではないでしょうか。
次回は日米の具体事例について解説したいと思います。