移籍市場で躍動する「スポーツ代理人」 ビジネスの仕組みは

吉田正尚外野手と代理人のスコット・ボラス氏(Photo by Billie Weiss/Boston Red Sox/Getty Images)

吉田正尚外野手と代理人のスコット・ボラス氏(Photo by Billie Weiss/Boston Red Sox/Getty Images)

巨額な契約金を伴うMLB移籍が、連日マスメディアを賑わせている。交渉役を務めるエージェントの存在感も年々増しており、先日も吉田正尚外野手とレッドソックスの5年総額年俸9000万ドル(約123億円)という大型契約をまとめたスコット・ボラス代理人の手腕が話題になった。

ボラス氏は、米フォーブスが11月に発表した「最もパワフルなスポーツエージェント」ランキングでトップ、また、彼が代表を務めるボラス・コーポレーションも「最も価値あるスポーツエージェンシー」ランキングで6位に入っている。

大企業化する、スポーツエージェントビジネス


エージェントビジネスは、代理人の個人事務所や法律事務所から始まったものの、今や「大企業化」している。

交渉の補佐役として各球団のニーズを分析する専門職員や契約書交渉を担務とする企業内弁護士、選手の資産運用や税務対策を担当する公認会計士、税理士、投資顧問まで、選手のニーズに幅広く対応する機能を持っている。

また、複数の選手の代理を受け持つことで、球団オーナー側と恒常的に接触し、市場のニーズと最大限の報酬について最新の情報を把握。交渉能力において、圧倒的な強さを発揮しているのだ。

先駆けはIMG社 タイガー・ウッズ、大坂なおみ等トップ選手を顧客に拡大


スポーツエージェントの先駆けは、1960年に、プロゴルファーとして絶大な人気を誇っていたアーノルド・パーマーが、オハイオ州クリーブランドの弁護士、マーク・マコーマックにスポンサー交渉のマネージメントを依頼したことが起源とされる。

マコーマック氏はロレックスと前代未聞の高額スポンサーシップを締結。そしてゴルフ傘をパーマーのロゴマークとして商標登録し、ゴルフ用品のみならず多岐にわたるアパレル契約により、巨額の報酬を獲得した。

パーマーの成功を契機に、彼のもとには種目を問わず世界中の著名スポーツ選手が続々と顧客として集まり、IMG(インターナショナル・マネージメント・グループ)と名付けたエージェンシーは大成功を遂げた。

アーノルド・パーマー・インビテーショナル(2020年)
Photo by Michael Reaves/R&A/R&A via Getty Images

その後もIMGは、スポーツ中継の制作会社、選手育成アカデミー、インターネット配信事業などに進出し、アスリートマネージメントでもタイガー・ウッズ、浅田真央さん、石川遼、松山英樹、大坂なおみ、そしてアカデミー出身の錦織圭やマリア・シャラポワさんなどとの契約で、拡大を続けてきた。

2003年にマコーマック氏が亡くなり、遺族によって投資会社フォーストマン・リトルに売却された後、14年に俳優や音楽アーティストの大手エージェンシーであるウィリアム・モリス・エンデヴァー(WME)に買収されて、現在に至っている。

WME Sportsは、前述の「最も価値あるスポーツエージェンシー」ランキングで3位にランクされている。
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文=北谷賢司 編集=宇藤智子

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