エージェントが得る手数料は──?
エージェントビジネスでは、選手の権利を擁護するため、選手と球団の契約交渉でエージェントが得られる報酬の歩合は、NFLが3%、NHLとNBAが4%、MLBが5%、FIFAは10%と上限が設定されている。
また、テニスとゴルフは、公式試合の賞金に関して、エージェントが手数料を得ることは禁じられており、エージェントが大きく稼げるのは、平均20~25%の手数料が競技団体から認められている選手個人のスポンサー料だ。
例えば、2022年の米フォーブス「最も稼ぐ女性アスリート」ランキングで3年連続のトップとなった大坂選手の場合、60億円強の売り上げからエージェントが得る歩合は10億円を超えると見て相違ない。
なお、大坂選手は今年、自身のスポーツエージェンシーをこれまでの担当代理人とともに設立して事業を開始しており、今後の動向が注目される。
大坂なおみ選手(Photo by Robert Prange/Getty Images)
M&Aによる規模拡大競争で、トップヘビーな業界に
老舗のIMGに対して、買収で急成長を遂げてきたのが、ワッサーマン・グループだ。
ユニバーサル映画スタジオの会長として君臨したルー・ワッサーマンの孫、ケイシィーが2002年に設立した同社は、MLBとNBAの主力選手を数多く顧客とし、松井秀喜氏やダルビッシュ有投手の代理人も務めたアーン・テレムの事務所を2006年に吸収合併して、一挙に市場占拠率を拡大。成長を続け、「最も価値あるスポーツエージェンシー」ランキングでも2位にまで昇りつめた。
テレム氏は、2015年に引退してNBAデトロイト・ピストンズのオーナー会社副会長に転身したが、今年、鈴木誠也外野手とシカゴ・カブスの5年総額8500万ドル(約100億円)の契約を成就させたのもワッサーマンである。
ちなみにランキングの1位は、2013年の発表以来トップの座を維持しているCAA社。大谷翔平投手の代理人として知られるネズ・バレロ氏が共同代表を務める野球部門をはじめ、NFL、NBA、NHL、欧州サッカーなどで2900の顧客を抱え、178億ドル(約2兆4000億円)の契約を管理し、最大9億7100万ドル(約1290億円)の手数料を得ると見られている。
期待される、タフな日本人エージェントの出現
かつて、野茂英雄投手がロサンゼルス・ドジャースに移籍した際には、故野村克也監督夫人の長男、ダン野村氏が代理人として注目されたが、その後は大物エージェントと称される米国人が日本選手のMLB移籍を請け負うことが恒常化している。
エージェントには、スポーツのみならず、言語に法律、財務会計の知識、さらに交渉能力が求められるため、ハードルが高いことは否めない。しかし、いつまでも外国人エージェントに依存することが望ましいとは思えない。
MLBに限らず、欧州の名門サッカークラブなど世界の舞台で、多くの日本人アスリートが活躍する時代に入っている。
海外の球団を相手に、タフな交渉役が務まる日本人エージェントの育成が急務である。
連載:スポーツ・エンタメビジネス「ドクターK」の視点