男女差が生じた別の理由としては、職場では男性より女性のほうが、自らにより高いハードルを課している可能性もある。女性は、寝不足の翌日に、職場で批判されたり失敗したりすると自信をなくしやすく、自分にはもっと多くの仕事を引き受ける能力がない、と考える傾向があるのかもしれない。
研究者が述べているこうした男女差の理由には、根底に共通するものがある。女性がキャリアップを目指すには、質のいい睡眠が欠かせないということだ。
これまでの研究でも、仕事のパフォーマンスと睡眠との関連性が示されている。以前からわかっているように、睡眠の質は、リーダーとしての行動や倫理的な行為、仕事への関与のほか、労働者が積極的に目標を設定するか否かに影響を与える。より一般的には、睡眠不足が、意思決定力や学習力、記憶力、リスクを評価する力、戦略を立案する力、集中力の低下と関連していることは、かねてから指摘されているとおりだ。
今回の研究結果は、女性の経営への参加を増やしたい企業にとって示唆に富んでいる、と研究者は述べている。「リーダーシップへの意欲や素質を、早い段階で示した女性に対しては、リソースや支援を追加で提供してもいいかもしれない。つまり、睡眠不足や気分の変化といった日々のアップダウンで自信や野心が低下しないよう、彼女たちの知的・感情的な資質を強化する支援のことだ」
研究チームはさらに、企業側に対して、従業員の睡眠の質を高めるために、柔軟な勤務形態を導入したり、職場内にエクササイズ用スペースを設けたりすることを提案している。勤務時間外の深夜メールや、過剰な業務負担など、睡眠不足の悪化を招く職場の慣行も、やめるようにすべきだ。
キャリアアップのための意欲を維持したい女性は、睡眠を優先させることが非常に重要だ。研究者たちはこう結論づけている。「この研究で得られた知見は、野心を持つ人にとって、セルフケアが重要であることを浮き彫りにしていると言える。野心的な人は、セルフケアに意識的にならないかぎり、運動や健康的な食生活といった、睡眠の質と気分の両方を向上させる日々の習慣をおろそかにする可能性がある」
(forbes.com 原文)