「ロシアの侵略に反対するウクライナを支援する北大西洋条約機構(NATO)にとって信頼できるパートナーであり続ける」
これに対する欧州各国の受け止め方は複雑だった。それは「イタリアの同胞」が「極右」の位置付けであり、第2次大戦時のファシスト指導者ベニート・ムッソリーニの支持者が立ち上げたファシスト政党を源流としているからだ。反移民などを繰り返し主張するメローニ首相はもともと欧州連合(EU)懐疑論者だったとされる。
「右派連合」として総選挙をともに戦い、現在は連立政権のパートナーである右派系ポピュリスト政党の「同盟」のマッテオ・サルビーニ党首は「制裁を受けた者が勝ち、制裁を加えた者がひざまずいている」などとロシアに対する欧米諸国の制裁の効果を疑問視するツイートをして物議を醸した経緯がある。
同じく、連立を組む中道右派の「フォルツァ・イタリア」の党首を務めるシルヴィオ・ベルルスコーニ元首相はロシアのウラジミール・プーチン大統領とは「親しい友人どうし」(欧州メディア)だ。
イタリアは欧州統合の原点となった1952年の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)発足時の構成6カ国の一員だ。それだけに、イタリアとEUの間に亀裂が生じ、対ロ制裁などで足並みが乱れるようだと衝撃はきわめて大きい。ドイツの週刊誌「シュテルン」は、「メローニ首相は欧州で最も危険な女性」と警戒感をあらわにした。
懸念されるフランスとの関係悪化
ただ、いまのところは欧州にくすぶる自身に対する懸念を打ち消すかのように前述の通り、メローニ首相はEUとの協調重視の姿勢を打ち出している。所信表明演説では「エネルギーをめぐるプーチンの脅しに屈することは問題を解決するどころか、さらに悪化させる」などとも主張した。
また、メローニ新政権の閣僚人事にEUの首脳らがホッと胸をなで下ろしている側面もありそうだ。
特に注目されたのは立て直しが急務となっている国の財政を司る経済・財務相のポストには、「同盟」の穏健派として知られる親EU派のジャンカルロ・ジョルジェッティ副党首が任命されたことだ。欧州中央銀行(ECB)総裁を歴任した経済通のマリオ・ドラギ前首相の政権下で経済開発相を務めており、EU各国には歓迎ムードが広がる。
11月15日にはウクライナ国境に近いポーランドの村にロシア製ミサイルが着弾。民間人に犠牲者が出た。メローニ首相は「(落下したのが)たとえ、ウクライナが受け続けている民間人への犯罪的な爆撃の阻止を目的とした同国の対空ミサイルだったとしても、起きたことの責任は完全にロシアにある」などとウクライナ支持を表明した。