経済・社会

2022.11.22 08:50

移民・難民問題でフランスと対立、「極右」首相イタリアの気になる動向


一方で、欧州の連帯を揺るがしかねない問題も浮上している。それは隣国のフランスとの関係悪化だ。発端となったのは、非営利活動団体(NGO)の「SOSメディテラネ」がチャーターした移民救助船「オーシャンバイキング」をめぐる取り扱いだ。同船はリビア沖で救助された234人を乗せており、うち子どもが57人。受け入れ先が決まらないまま、地中海を20日間にわたって漂流していた。

フランスが最終的にトゥーロンへの寄港を受け入れたが、同国のジェラルド・ダルマナン内務相は「非人道的である」などとイタリアの対応を強く非難した。

というのも、同船がイタリア領のシチリア島沖に停泊していた際、同国が受け入れを拒んだからだ。国際法上は「最も近い安全な港が遭難した人々を救助した船を受け入れる」ことが義務付けられている。

SOSメディテラネは「明白な法律違反」と指摘。ダルマナン内務相も「(イタリアは)責任ある欧州の国家として振る舞わないという選択をした」などと述べ、報復措置として今年の夏から来夏にかけてフランスが予定していたイタリアにいる3500人の移民・難民の受け入れをただちに中断することを発表した。

これに対して、メローニ首相は11月10日の会見の席上、「攻撃的な対応は理解しがたく、正当化できない」などとフランスを非難。両国の対立が収まる気配はない。

EUも試される移民・難民政策


イタリアには欧州において自国が移民・難民らの玄関口になっていることへの不満がある。統計でも同国の対岸に位置するリビアやチュニジアからの渡航者は多い。

国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)によると、今年に入ってイタリアに到着した難民の数は11月13日までに9万0249人に達し、昨年1年間の6万7477人を大幅に上回る。欧州を目指す難民の増加はコロナ禍の落ち着きが一因という。

イタリアのマッテオ・ピアンテドシ内務相は公表された声明で、「イタリアが今年だけで9万人の難民を受け入れているのに、234人の移民を受け入れるよう要請したフランスの反応はまったく理解できない」と強く反発。「他の国が受け入れる用意のないものを、なぜイタリアが進んで受け入れなければならないのか」などと強調した。

メローニ政権はリビアからイタリアへ向けて地中海を渡ろうとする移民の取り締まり強化を主張する。国際通貨基金(IMF)によれば、イタリアの来年の実質経済成長率は前期比0.2パーセント減とマイナスに転落する見通し。景気が停滞の色合いを濃くしても、EUが移民・難民政策で一枚岩になることができるのか。まさに連帯の真価が問われている。

文=松崎泰弘

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