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2022.11.18

日本のスタートアップが上場後に株価低迷する、3つの理由

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筆者が学生の2005年頃、就活生に人気の上位企業は大手企業ばかりで、まだスタートアップ企業は危険という印象が強かった。しかし、あれから15年以上が経ち、今では新卒でスタートアップ企業に入社したり、インターンとして働く学生も増えてきている。

スタートアップ企業は経営陣と社員、インターンの距離も近い。時には資金調達や上場時の株価などといった話を耳にすることもあり、学生のうちから興味を持つ機会も多くあるようだ。

今回は、Forbes JAPANで働くインターン生からの「なぜ日本のスタートアップは上場後に株価が低迷するのか」という質問を起点に考察を書いていく。

本当にスタートアップの株価は低迷しているのか?


スタートアップ企業の株価について話をしていると、よく「初値天井」という言葉を耳にすることがある。実は今回の質問をしてきたインターン生もこの言葉を聞いたことが疑問を持ったきっかけだったという。

スタートアップ企業の1つの成長モデルとして、創業してから複数回にわたってVC(ベンチャーキャピタル)などの投資家から資金調達を繰り返して事業を拡大し、証券取引所に上場する(IPO)というものがある。

上場に際しては公募価格が設定されるが、実際に上場した後に最初に取引される株価とは異なる。人気があれば公募価格の倍以上に跳ね上がることもあるし、逆もまたしかりだ。

この最初に取引された株価を「初値」というが、その値段を天井として、取引初日以降、だらだらと株価を下げていってしまうことを「初値天井」という。なかには「上場ゴール」と揶揄されることもある。

では実際に初値天井になるケースは、どれほど存在するだろうか?コロナ前の2019年から執筆時点(2022年11月8日)までにIPOした計369社を対象にみてみよう。

このうち、初値よりも執筆時点の株価が低い企業は272社と全体の73.7%もある。「初値天井」かは別として、多くのIPO企業が初値を超えられていないことが分かる。もちろん、2022年の上場組と2019年の上場組では上場してからの経過時間が違う。一概にはまとめられないが、初値で買った投資家が保有し続けて利益を出せているケースが、それほど多くないのは事実だ。
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文=森永康平 編集=露原直人

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