誤った企業価値の評価
それでは、なぜそのようなことが起きるのか。理由を1つだけ挙げて断言することは不可能だが、考えられる可能性は3つある。
まずは、上場までの期間で下された企業価値の評価が正しくないということだ。
会社を立ち上げ、事業を拡大していくうえでは資金が必要になる。銀行など金融機関から十分な融資をしてもらえれば問題ないが、実績のないスタートアップ企業には難しい。そこで、VCやエンジェル投資家などに株を渡す代わりに、資金を調達する「エクイティファイナンス」を行う。
当然、投資家はリターンを求めるため、基本的には資金調達の度に株価を上昇させていく。そして、上場するにあたっては直近の資金調達の際に使われた株価よりも、さらに高い株価を公募価格に設定する。
公募価格で投資するには証券会社で応募し、抽選の結果、割り当ててもらう必要があるため、外れれば上場後に買わなければならない。人気がある銘柄であれば、多くの投資家が抽選で外れているため、初値は公募価格よりも高くなるのが一般的だ。
このように「創業→何度かの資金調達→上場時の公募価格の設定→初値」と、不特定多数の投資家が投資に参加出来るようになるまで株価が変化していく。しかし、上場前の企業価値の評価が誤っているために、初値天井になりやすいのだろう。
上場してしまえば、一般投資家など多数の人の目によって評価され、需給で株価は決まる。しかし未上場の間は一部の投資家によってのみ株価が算定・形成される。そこでの評価が過剰なものになれば、上場以降もその高い評価を維持することは難しい。
実際にスタートアップ企業が資金調達のプレスリリースを出したときに、そこに記載された金額をみて驚くことが多い。ある程度の株式比率を経営陣が維持しつつ、これだけの金額を調達したということは、かなり高い株価を使ったのだろうと推察できるからだ。
出資をしたVCをはじめとする投資家が、何を評価してそこまで高い株価を認めたのかは部外者の筆者には分からない。ただ、公開情報だけを見ると明らかな過剰評価だとしか思えない。そういう企業は、やはり上場して不特定多数の厳しい目に晒されると、メッキが剥がれていわゆる初値天井になるケースが多いのだ。