しかし、26億人の月間アクティブユーザーを抱えるユーチューブの有料プランの利用者が8000万人であることを考えると、ツイッターの収益化はかなり険しい道のりに思える。
ツイッターの2022年第2四半期の売上は12億ドルだったとされている。月額8ドル、つまり四半期で24ドルとすると、その収益を完全にカバーするには約5000万人の加入者が必要だ。しかし、マスクは同社が毎日400万ドル以上の損失を出していると述べており、四半期(90日間)で3億6000万ドルの追加の売上が必要になる。
これらを合算すると採算分岐点への到達には、さらに1500万人の課金ユーザーが必要になり、合計で約6400万人という計算になる。
しかし、最も可能性の高いシナリオは、ツイッターができるだけ多くの広告収入を維持しながら、課金ユーザーを追加することであり、同社はそれを目指すと同時に、3700人の正社員を解雇し、追加で4400人の契約社員を削減したと報じられている。
ツイッターが仮に、現状の広告収入を維持できるのであれば、収益化に必要な月額8ドルの課金ユーザーは2400万人弱、つまり10人に1人で済むことになる。もちろん、ツイッターからは最近、広告主の撤退が相次いでいるため、その実現は確実ではないが、状況が落ち着けば帰ってくる広告主も居るだろう。
しかし、全ユーザーのうちの10%が課金するというのは、高すぎる目標かもしれない。多くのツイッターの利用者は、お金を払う意志がないと述べており、作家のスティーブン・キングのように「自分は価値を提供しているのだからツイッターが私にお金を払うべきだ」と主張する人も居る。
さらに、もう一つの悪い要素と言えるのは、筆者がこの試算のベースとした第2四半期決算の売上には、ツイッターが昨年10月にマーケティング会社のAppLovinに売却した、アドテク子会社のMoPub の売却益の一部が含まれていることで、その額は約1億ドルと試算できる。このことを考慮すると、ツイッターの収益化へのハードルはさらに上がることになる。
マスクは、大量の解雇によってツイッタのコストを削減しているが、それは同時にプラットフォームの成長を阻害し、広告収益に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、マスクは買収に際してツイッターに250億ドルの債務を負わせており、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、毎年約8億4500万ドルの利払いが発生することになる。
しかし、ひとつだけ確かなことは、マスクによるツイッターの買収が、近年退屈だったソーシャルメディア界を揺るがし、最もホットな話題のひとつを提供したことなのかもしれない。
(forbes.com 原文)