中国の富裕層がシンガポールの不動産を爆買いする理由

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世界的な不動産市場の停滞をよそに、シンガポールの住宅市場は活気付いている。その原動力となっているのは、個人向け高級住宅を次々と購入する海外投資家だ。特に、豊富な資金を持つ中国本土の投資家の動きが著しい。

シンガポールでは、政府が不動産購入の抑制に乗り出しており、住宅ローン金利は急上昇しているが、不動産価格は記録的な水準にまで高騰している。これは、他国の超富裕層が、通貨が安定し、政情不安がないこの都市国家を安全な避難場所と考え、家族や資産を移しているからだ。

中国は世界第2位の経済大国だが、経済や政治の情勢をめぐる不透明感に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する厳格な感染拡大防止政策もあって、その成長には陰りがみられる。中国に住む富裕層の多くは国外に住居を求めており、シンガポールはその中でも最も人気のある移住先だ。

ロンドンに拠点を置く投資移住コンサルティング会社ヘンリー&パートナーズのプライベート・クライアント部門でトップを務めるドミニク・ヴォレク(Dominic Volek)は、そう指摘する。

不動産コンサルタント会社、オレンジティー&タイ(OrangeTee & Tie)が10月に発表したリポートによると、2022年1~8月にシンガポールで海外からの買い手に売却された個人向けコンドミニアムのうち、中国本土在住者が購入者だった割合は42%に達したという。

さらに、2022年に高級住宅街で高額物件を購入した者の出身地を見ても中国本土が最多で、500万シンガポールドル(約5億1100万円)以上のアパートメントのうち、20%近くは中国本土からの投資家が購入しているという。

シンガポールでは、不動産購入に税金を課す新たな法律が施行され、住宅ローンの融資限度額が引き下げられたが、こうした施策も、需要の足を引っ張る要素にはならないようだ。

「経済の先行きがますます読みにくくなっているなかで、シンガポールドル高になっていることから、この国の不動産は今後も安全な避難先とみなされるだろう」と、オレンジティー&タイはリポートで述べている。

一方で、巨額の資産を持つ個人富裕層が、シングルファミリーオフィス(特定の一族の資産の管理運用を担う組織)をシンガポールに設けるケースは増えている。1000万シンガポールドル(約10億2200万円)以上の資産を管理することで、税控除などの特典があるからだ。

シンガポール金融管理局の統計によると、こうしたファミリーオフィスの数は、2020年の約400件から2021年には700件へと、2倍近くに増加している。さらにこのデータによると、世界的な投資家がシンガポールに続々とオフィスを構えるなかで、2021年には純資本流入が16%増加し、過去最高の4480億シンガポールドル(約45兆8000億円)に達したという。

forbes.com 原文

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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