そうしたなか、心血管疾患の発症リスクと、住んでいる地域の「歩きやすさ」(自宅からスーパーや薬局、教会、学校などに安全、簡単に歩いていけるか)の間には相関関係があることが、最新の2つの研究から明らかになった。
一方の研究は全米を対象としたもので、7万あまりある国勢調査の区画を「最も歩きにくい」から「最も歩きやすい」までの4段階で分類。それと、米疾病対策センター(CDC)のデータセットにある冠動脈疾患の有病率や、心血管疾患の危険因子である高コレステロールや肥満、高血圧、2型糖尿病の有症率を照らし合わせて分析した。
その結果、最も歩きやすい地域では心血管疾患の有病率が5.4%にとどまっていたのに対して、最も歩きにくい地域では7%にのぼることがわかった。また、高血圧や肥満、高コレステロールの症状がある成人の割合も、最も歩きやすい地域で30%だったのに対して、最も歩きにくい地域では36%と高かった。
論文の筆頭著者であるクリーブランド医療センターのイッサム・モタレクは、「心血管疾患やその危険因子に関しては、コミュニティーのデザインのされ方が重要な役割を果たすということが、徐々に認識されるようになっている」と指摘。「店舗、職場、地元の公園、どこに歩いていくにせよ、歩きやすい地域では人々は体を積極的に動かすように促され、それは健康の維持に役立つ」と述べている。
もうひとつの研究はテキサス州の大都市ヒューストンで行われた。研究チームはヒューストンの各地域の歩きやすさを0〜100でスコア化したうえで、やはり4段階に分類した。日常の用事をすませるのにも自動車が必要な地域ほど低く評価されている。その結果と、地元の成人90万人あまりの健康記録データを突き合わせて関係性を調べた。
すると、暫定的な結果ではあるものの、心血管疾患の既往歴がない住民は、歩きやすい地域に住んでいるだけで、最も良好な危険因子プロファイルとなる率が、車に依存した地域に住んでいる人よりも2倍高くなることがわかった。
また、心血管疾患の既往歴がある人でも、歩きやすい地域に住んでいると、心血管疾患の危険因子プロファイルが最も良好である率が、歩きにくい地域に住んでいる場合と比べて58%高かった。
論文の筆頭著者であるヒューストン・メソジスト病院のオマール・M・マクラムは、「非常に歩きやすい地域に住むと、心血管疾患の既往歴がある人もない人も、心血管疾患の危険因子から守られる可能性があることがわかった」と説明。「データの解析に際しては、調査対象の住民のほぼ半分が、完全に車に依存した、最も歩きにくい地域に住んでいることに気づき、愕然とした」とも明かしている。
(forbes.com 原文)