ホールフーズやブリストル・ファームズといった高級食品スーパーでコールドブリュー・コーヒー飲料の販売を開始し、分散型の倉庫運営によってコールドチェーン(低温流通体系) の最適化に取り組んできた同社は今、コンブチャ市場にも進出しようとしている(コンブチャは東モンゴル原産の発酵飲料。日本では「紅茶キノコ」とも言われる) 。
だが、2016年にマイク・ダミコ(Mike D’Amico)と兄のパオロ・ダミコ(Paolo D’Amico) が、友人のアリ・モハメド(Ali Mohamed)およびカリーム・エルハマシー(Kareem Elhamasy) と共にこのビジネスを始めた時には、このような事業展開はまったく頭になかったという。当時の創業メンバーは、わずか3基のワゴンを使って、路上でコーヒーの販売を行っていた。
「海水浴客や通勤客向けに、サーバーからオンタップ でコーヒーを販売していた時には、自分たちがレディ・トゥ・ドリンク(RTD)のブランドになることは予想だにしていなかった。当時の目標は、質の高い原材料を用いて、最高のナイトロ・コールドブリュー体験を提供すること、それだけだった」とマイク・ダミコは振り返る。
しかし、消費者からの需要の高まりに押される形で、ナイトロ・ビバレッジは、ケグレイター(冷蔵機能を持つ樽) の容量を、当初の3ガロン(約11.4リットル)から5ガロン(約19リットル)へと拡大し、最大100カ所でコーヒーを提供するまでに成長した。こうなれば、小売業界への進出は、同社にとって自然な成り行きだったように見える。
当初は、ビール醸造会社向けに移動式缶充填サービス を行う企業がナイトロ・ビバレッジに注目し、2018年から2020年まで同社と提携して、共同で缶入り飲料の製造を担った。その後、使用する缶を、標準サイズのソーダ缶から、12オンス(約355ml)のスリム缶に移行し、さらに流通のレベルアップを図るなかで、ナイトロ・ビバレッジはより大手の企業に提携先を切り替えた。
この判断はちょうど、窒素を注入したコールドブリュー・コーヒーに対する認知が消費者のあいだで広がった時期と重なった。飲料に 窒素を注入するというコンセプトが、一般向けに導入されたのは2010年代初めのことだった。その後は、消費者向けの大手ブランドから、急成長を遂げるスタートアップに至るまで、スターバックスやライズ・ブリューイング(Rise Brewing) をはじめとするコーヒー業界の名だたる企業が、続々と自社ブランドの窒素注入飲料を発売した。