調査会社フォレスター(Forrester)は、メタバースのプロジェクトに対する初期の興奮が冷めるにつれ、メタバースが急激に普及するという見通しが消え去ると予測した。
メタ社の「Horizon World」のゆっくりとした進化は、いつの日か人々が実物そっくりの仮想現実の中で自転車のレースから外科手術の練習まで何でもできるようになるという見通しからは程遠い。仮に、人々が足が生えたアバターで交流するようになっても、米国の成人の65%は、対面でのコミュニケーションを好むとフォレスターは述べている。
メタが先週、悲惨な四半期決算を報告した後、メタバースを取り巻くセンチメントは史上最低の状態にあるようだ。
初期の興奮が冷めていく中で、既存のプラットフォームでの没入型のエクスペリエンスは、時間をかけて盛り上がり、開発者たちはメタバースのビジョンの実現に向けて、一歩ずつ歩み続けていくとフォレスターは予測した。
フォレスターは、マイクロソフトが「Mesh」というバーチャルリアリティ製品のブランドを、メッセージングプラットフォームのTeamsに直接統合したことが、消費者がメタバースを体験し始める例として挙げている。
同社は、2023年にはZoomやSlackなど、少なくともあと3社がメタバース的な機能を導入すると予測している。しかし、何百万人もの人々が、業務用アプリケーションにこれらの機能が追加されたことに気づいても、アクティブなユーザーになるのは5%に過ぎないとフォレスターは述べている。
没入型のメタバースに参加するためには、VR(拡張現実)対応のヘッドセットが必須となるが、その価格の高さも普及の妨げの1つになりそうだ。マイクロソフトの「HoloLens」 2の価格は3500ドルで、技術にあまり詳しくない人向けには、599ドルのHPのVRヘッドセット「Reverb G2」がある。さらに、メタの「MetaQuest Pro」ヘッドセットは、1499ドルで販売されている。
メタバースの失速はNFTの痛手に
一方で、ブランドや著名人が数え切れないほどのコレクションを発表したおかげで知名度が上がったNFTは、メタバースが失敗した場合の犠牲者になるかもしれない。フォレスターは、米国のネットを利用する成人の72%がNFTを所有したことがなく、将来的に所有する意志がないことを明らかにした。
ブロックチェーンを基盤とするメタバースにおいて、NFTはデジタル資産の所有を可能にし、人々にバーチャルな不動産を所有できるようにする。ラッパーのスヌープ・ドッグは「The Sandbox」のメタバース内で土地を所有しており、彼のスーパーファンは、45万ドルを支払って、オンライン上のスヌープの隣の土地を購入した。
フォレスターは、NFTプロジェクトが今後、顧客ロイヤリティ関連のツールに移行すると予測している。その一例として、スターバックスはNFTを利用した特典を提供している。
(forbes.com 原文)