【対談】岩井克人 x 孫泰蔵 経済敗戦の要因は「1周遅れの株主資本主義」にあり

孫 泰蔵(左)と岩井克人(右)


Point 3 「株式持ち合い」と「ヒト」としての会社


「株式持ち合い」は、戦後日本の資本主義における最大の特徴のひとつ。かつての日本には、三井、三菱、住友、第一勧銀、富士(芙蓉)、三和という六大会社グループがあり、数多くの中小規模の会社グループがあった。それらは、メインバンクを中心としておたがいに株式を持ち合い、会社乗っ取り屋などの外部からの支配を極力排除してきた。

こうした仕組みによって、グループ内の各社は、ある種の「ヒト」として、会社それ自体の主体性を確保することができていたのが戦後の日本の資本主義であった、と岩井は指摘している。とはいえ、一世を風靡した日本型の会社が復活するかという問いには、「日本の会社は変わらなくてもよい」が「変わらなければならない」と答えている。

株主主権が弱体であったことでポスト産業資本主義時代に親和性が高いが、重厚長大産業が中心だった後期の産業資本主義に適応した会社システムを、みずから率先して新製品や技術、市場開拓をし続けることができる、主役としての人的組織を育成する設計へと変える必要があるとしている。(岩井克人『会社はこれからどうなるのか』より引用)


孫 泰蔵◎連続起業家、ベンチャー投資家。「大きな社会課題を解決するコレクティブ・インパクトを創出するためのコミュニティ」を標榜するMistletoe創業者として、社会課題を解決しうる起業家の育成やスタートアップの成長支援に尽力している。

岩井克人◎東京大学名誉教授、神奈川大学特別招聘教授、日本学士院会員、東京財団政策研究所名誉研究員。著書『貨幣論』(筑摩書房)、『会社はこれからどうなるのか』(平凡社)、『経済学の宇宙』(日本経済新聞出版)など多数。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=吉澤健太

この記事は 「Forbes JAPAN No.100 2022年12月号(2022/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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