しかし、こうしたアクションに反応してくれるのは、新しいことに興味関心を持っている従業員や、メリットに関心がある従業員に限定されてしまうことも多い。一部の従業員だけではなく全従業員が声を上げる風土に変えるためには、もう一つ、ある工夫が必要だ。それは「ポジティブインフルエンサーを巻き込むこと」である。
ポジティブインフルエンサーとは、ポジティブな雰囲気や影響を多くの人に及ぼすことができる人のこと。私の経験上、いわゆる「ちょっとしたお節介」を焼ける従業員は該当する可能性が高い。
例えば、コーヒーメーカーの使い方がわからなくて困っている新入従業員に対して、「どうしたの?」と声をかけられる人には、小さな気づきを行動につなげる力があり、そういう人は往々にして、高い「巻き込み力」を兼ね備えている。
そんなポジティブインフルエンサーを何人か発見し、積極的に声をかけおくと、新たな取り組みが始まると同時に、井戸端会議的に周囲を巻き込んでくれるだろう。
「巻き込み力」の高い従業員を味方につけることが大切なのは、そもそもD&Iがインクルージョン(巻き込み)の概念を含んでいるからとも言える。D&I担当自身も巻き込み力を持ち、インフルエンサーを強い従業員を戦略的に巻き込んでいけば、D&I施策は一気に浸透していく。