世界のサメの「集団座礁」に関する調査結果の興味深い傾向が判明

2022年5月25日、インドネシア・西スマトラの海岸に打ち上げられたジンベイザメ(Getty Images)


サメの座礁報告は、2011~2021年が前の10年(2000~2010年)に比べてずっと多く(全報告中69%)、1999年以前の報告は少なかった。「1967年に起きた2件の集団座礁(n=505)を別にすると、1880~1999年のフリーアクセス・データベースで見つかった座礁報告はわずか164件でした」と著者らは明かした。「そのうち70件が1982年で、単独および小規模の座礁報告に関して最も代表的な年です」

ジンベイザメ
座礁報告には大型、小型両方の種が見つかっており、報告された最大の個体は9.45メートルのジンベイザメのオスで、最小は20センチメートルのレッドスポッテッドキャットシャークだった(Getty Images)

最も多く座礁が報告されている10種の中で、イタチザメが座礁の大半(n=1153)を占めており、ブラウンスムースハウンド(n=531)、ネズミザメ(n=403)が続いた。イタチザメとブラウンスムースハウンドの座礁は米国で起きたものであり、ネズミザメの座礁の過半数(41件中22件)も米国で起きていたことは興味深い。これらの種が、北米諸国の周辺に出入りしていることで知られていると考えれば納得できる。

年齢による相違は見られず、幼生と成体は同じ割合で影響を受けている。しかし性別は? そこには間違いなく違いがある。集められた報告のほとんど(n=1837、61.5%)には性別が記載されていなかった。それ以外(n=1149、38.5%)を見ると、848頭( 73.8%)のメスが座礁しており、オスに識別された個体は301頭(26.2%)だった。サメ類は全年齢、両性別を通じて生存率が著しく低く、こうした厳しい状況を生き延びる確率の高い他の分類群と比べて、サメがより脆弱であることが見て取れる。なぜサメが座礁するか正確な理由ははっきりわかっていない。提起されている説明の中には、病気(たとえば髄膜脳炎)、漁業、衝突事故および海洋ごみなどが挙げられている。

「私たちの研究結果は、哺乳類と比べて数は少ないものの、サメ類の座礁はこれまで無視されてきており、これらの事象の理解を深め、記録し、適切に対応するるためには緊急な測定が必要です」と著者らは説明する。「小型種が支配的ではありますが、中型、大型のサメもこの現象の影響を受けています。しかし、集団座礁は(南アフリカのヨシキリザメのような特殊事例を除き)小型のサメにより強い影響を与えています。ただ、このパターンはサメの大きさよりも、種に特異的な行動、たとえば集団で移動する傾向などに関係したものである可能性が高いと考えられます」本研究の限界を踏まえると、実際の座礁の数はもっとずっと多い可能性が高く、著者らは「全世界で厳密なサメ座礁監視プログラムを確立し、総合的な形態学データを記録、保存、共有することでサメの座礁事象の完全な診断的研究を組織的に行い、研究と理解の改善をはかることが急務です」と指摘した。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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